読響いわき公演「ドヴォルザーク・プロ」

2018.02.06.Tue.12:52
在京のオーケストラで、最近、読響の評判が良いようです。機会があれば聴いてみたい!と思っていました。いわき芸術文化交流館「アリオス」からのDMで、読響の特別公演(指揮・大友直人)があることを知りました。ただ“ドヴォルザーク・プログラム”ということちょっと…。なぜなら私はドヴォルザークの音楽がそれほど好きではない。(CDも10枚ぐらいしか持っていません。おそらくベートーヴェンはその30倍ぐらい持っているかもしれませんw。)演目はチェロ協奏曲と「新世界」。どちらも超有名曲。それでも“読響の現在”を聴きたい気持ちがまさりました。いわき市はわが家から車で北へ70分ぐらい。公演は夕方からだったので、途中、いろいろ立ち寄りながら福島県まで行ってきました。

オケのメンバーが着席すると、コンマスは長原幸太。チェロ主席が遠藤真理。オッ!と思いました。長原は数年前、水戸室内管の定期で客演していました。並みいるメンバーの中のひとりでしたが、ボウイングが滑らかで歌うよう…。際立った弾き方だったので注視していた音楽家です。遠藤は日曜午後のFM番組「キラクラ」のMCで有名ですが、もともとはソリスト格の音楽家。読響も都響のように弦セクションのトップをソリスト・クラスにしてきたようですね。

前半は、ドヴォルザーク作曲のチェロ協奏曲。独奏者は水野優也。彼は桐朋音大に在学生。繊細で生真面目、端正な演奏だとは思いました。しかし楽器が朗々と鳴っている感じがしない。豊かな響きが聴けなくてがっかりしました。第3楽章のヴァイオリンとチェロの二重奏では、水野は長原に圧倒されていました。彼はまだ協奏曲を人前で弾くには早いと思いました。私がこの曲を最後に聴いたのは30年ぐらい前の東京文化会館、ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチの独奏、小澤征爾指揮&新日本フィルの特別演奏会でした。あの時のチェロは凄かった。最上階までチェロの音が響いていました。

後半は、交響曲第9番ホ短調「新世界」。第2楽章は「遠き山に陽は落ちて…」で有名な旋律がありますね。この演奏は満足しました。弦はなかなかの厚みとアンサンブルも緻密。コンマスの長原は常に後方を気にしながら、弦を統率しているように見えた。木管の響きもまあまあ。(第2楽章のセカンドオーボエの方、オーボエとコールアングレを忙しく持ち替えながら大変でしたね。)ホルンは特に良かった。この曲は人気曲でもあるので、十分に演奏をし慣れている感じがしましたね。大友直人は指揮棒なし。比較的、オケのメンバーに自由に弾かせ、要所だけは押さえた指揮ぶりでした。それとこの曲がある意味でベートーヴェン的なところを意識させるようなところがティンパニーの叩かせ方や主題労作的なところの弾かせ方に感じました。そういえば第4楽章は、第1~3楽章の主題動機を上手に再登場させています。これはまさに「第九」の第4楽章と手法は同じですね。大友の指揮でちょっと気になったのは、フレーズをちょっと引っ張るようなところでしょうか。会場は、第4楽章の「鉄道オタク」のドヴォルザークが喜びそうな、蒸気機関車がゆっくりと力強く車輪を動かしながら疾走しようとする壮大な音風景に拍手喝采でした。

読響、まあまあ良いじゃん!
機会があれば、東京のホールで聴いてみたいと思いました。

■読売日本交響楽団いわき公演
■2018年2月4日(日)17時~@いわき芸術文化交流館アリオス
■大友直人指揮&読売日本交響楽団 チェロ独奏:水野優也
♪ドヴォルザーク:チェロ協奏曲ロ短調op104
(ソリスト・アンコール)
♪バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番からプレリュード
【休憩】
♪ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調「新世界より」op95
(アンコール)
♪ドヴォルザーク:交響曲第8番ト短調op88から第3楽章

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朝ドラ「ひよっこ」の谷田部家を訪ねて

2018.02.05.Mon.19:54
私はあまりTVドラマを見ませんが、昨春から半年間、放送された朝ドラ「ひよっこ」は例外的に見ていました。なぜならドラマの舞台が私の地元の茨城県の県北地域だからです。ドラマのヒロインの谷田部みね子(演:有村架純)は奥茨城村出身という設定。ドラマの内容もなかなかおもしろかったです。波乱万丈の人生を歩んだ人物を描くのではなく、地に足がついた普通の人々。登場人物が丁寧に個性的かつ魅力的に描かれ、共感できることも多かった。朝ドラの歴史の中でも、異色作だと思います。

初回放送で出てきたみね子を家は、茨城県の農村によく見られる南面に半間ほどの広縁がある赤い屋根の民家。私は、どんな場所でロケしたのか気になっていました。機会があれば訪ねてみたかった。そしてその日がやってきました。2/4は読売日本交響楽団のいわき公演を聴きにいくことになっていました。ロケ地がある高萩市を通ります。国道から30分ぐらい山間部へ入ると谷田部家があることは事前調査で分かっていました。冬タイヤは履いた安心感があったので、近くまで行ってみようと思っていました。県道から細い道へ入っていきましたが、最終的なアプローチとなる道は、車1台がギリギリ通れるという狭さ。対向車がきたらどうしよう…と思いながら運転しました。するとTVでみた赤い屋根が見えてきた。雪が積もっている田んぼは、ドラマで田植えをしていましたね。TVでみたまんまの環境でした。しかし、よくぞこんなところでロケをしたものです。隣の市に住んでいても、ロケ地でなければ、絶対に行くことはないと断言できるような場所。NHKのロケ隊、頑張りましたねぇ。
雪がまだ残っていました。雪の中のみね子の家の画像、貴重かもw。

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お住いの方がいるようでしたので、遠くから見るだけにしました。近くには小川。まったくの無音の世界で、耳を澄ますとせせらぎのサラサラした音だけが聴こえてきます。そして私が踏みしめる雪のギュッギュッと締まる音。15センチぐらい積もっていました。こういう場所にたたずんでいるだけで、癒やさそう…。空気も澄んでいる!この周辺には私だけしかいませんでした。

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時間はお昼を過ぎていました。私もお腹がすいてきた。ここから40分ほど車を走らせて、北茨城市の花園渓谷にある川魚と山菜が食べられるお店に立ち寄りました。これも「奥茨城の味」と言えます。この日は、ニジマスの塩焼きをいただきました。美味しかった!

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「氷瀑」 袋田の滝 2017.1.30

2018.02.02.Fri.13:10
1/30火曜の「袋田の滝」です。
これは第2展望台から見たものです。
高さ120m、巾73m、4つの段になっています。
最上段に人が立っています。
これでスケール感が分かるでしょうか。


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凍結した袋田の滝

2018.01.31.Wed.10:16
トンネルを抜けると
そこは氷の世界だった…。



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1/30午前、大子町の袋田の滝をみてきました。前日の県内ニュースによると、先週末の大寒波で滝が80%程度凍結しているらしい。子供のころから、何度もこの滝を訪れていますが、私はまだ凍結している姿を見たことがありません。これは千載一遇のチャンス。午前中にやろうとしていた仕事は、夜に回せばよい。冬タイヤに履き替えたという安心感もあり、車を飛ばして行ってきました。大子町は福島県や栃木県と接する県の北西部です。日立に比べるとやはり寒い。
チケットを買ってゲートに入り、滝と対面するまでしばらくトンネルのような地下通路を歩いていきます。すると右手に、いきなり氷の壁が現れました。川端康成の「雪国」の“トンネルを抜けると…”という有名な冒頭の言葉が出てくるのは自然でしょうw。見事に袋田の滝が凍結しています。私、この時、映画「シンゴジラ」の終盤、東京駅近くで街を破壊していたゴジラに血液凝固剤が投与されて、凍りついたシーンを思い出しました。極地に行った時に見える景色って、こんな感じなのでしょうか?

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袋田の滝は「4度の滝」と言われていて、4段の階段状になっていること、四季ごとに見え方が違うので4度行く価値があるなど、いろいろ理由付けがされています。

西行法師はここを訪れた時、以下のように詠みました。

花もみち
経緯(よこたて)にして
山姫の
錦織り出す
袋田の瀧

もし凍結した滝をみたら、どう詠んだでしょうね。荒々しい氷のテクスチュアは、人間の介入を拒否しているかのように見えます。しかし、第2展望テラスへ行くと、最上の氷の段へ登ろうとしている人が見えました。高さ120mの高さから落ちたら、たいへんなことになります(苦笑)そこに壁があるから登るのでしょうか?

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もし次回、ここへ来ることがあるなら、
台風が去った直後の水量が増した時の姿を見たいですね。
おそらく滝が荒れ狂う龍のように見えるはず。

これは、昨日、私が投稿した氷結した袋田の滝の動画。
https://www.youtube.com/watch?v=BTE9GBDrYWQ


これは、2016年秋に私が投稿した穏やかな袋田の滝の動画。
https://www.youtube.com/watch?v=S8tedVkIBSw

チョ・ソンジン| ピアノリサイタル@水戸

2018.01.28.Sun.10:00
■チョ・ソンジン| ピアノリサイタル
■2018年1月24日(水)@茨城県民文化センター
♪ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番ハ短調op.13「悲愴」
♪ベートーヴェン:ピアノソナタ第30番ホ長調op.109
【休 憩】
♪ドビュッシー:「映像」第1集
♪ショパン:ピアノソナタ第3番ロ短調op.58
【アンコール】
♪ショパン:スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31
♪リスト:パガニーニによる大練習曲S.141から第3番嬰ト短調「ラ・カンパネラ」

1/24の極寒の夜、水戸の茨城県民文化センターで韓国出身のチョ・ソンジンのピアノ・リサイタルを聴いてきました。彼の生演奏を聴くのは4度目です。それぞれのリサイタルにおける私の印象が少しずつ異なることがちょっとおもしろいw。

最初が2010年3月、佐川文庫@水戸。浜松ピアノコンクールでのソンジンの演奏を聴いた故中村紘子氏の推薦で実現した15歳のデビュー・リサイタル。その時の演奏に私は驚愕。特に「熱情ソナタ」は荒削りながら、高揚感に満ちた感動的な演奏で、真面目に研鑽を積んだら、将来すばらしい音楽家になるにちがいないと確信しました。
二度目は2014年10月の浜離宮朝日ホールのリサイタル。著名なコンクールへ出場を目指していることが感じられる演奏。モーツァルトやシューベルトの曲を弾いても、表現のニュアンスの中にショパン臭が見え隠れしていました。
三度目は2015年のショパン・コンクール優勝直後の2016年2月、佐川文庫@水戸。ショパン・コンクール優勝の凱旋リサイタルとなりました。しかし私はあまり感動できなかった。音もキレイでミスが少ない演奏であったけれど、アスリート的な演奏で、本来の自分の音楽を見失っている印象を持ちました。
そして今回が四度目。やっとコンクール垢が取れてきて、ようやく音楽家としてリスタートできた印象を持ちました。作曲家の意図を彼自身の言葉で語ろうとする姿勢が感じられました。

前半はベートーヴェンの初期の8番と最晩年の30番。
8番。第一楽章のはじまりの打撃の和音、その直後のわずかな間が絶妙。楽譜にはない余白が音楽に成っていた。図と地を意識した弾き方がとてもおもしろい。その後、緊張感を保ったまま非常にゆったりとしたテンポで進行しながら、徐々に疾走をしはじめました。第三楽章は、疾走しながらも、「悲しみよ、さようなら」と言わんばかりの諧謔的な表現が見え隠れする洒脱な演奏。全体的にサラッと演奏されました。しかしそれは8番の終わりと30番のはじまりをうまくリンクさせるための意図だったのかなと思いました。当初、8番と30番を並べてられたことが「冒険」のように見えましたが、なるほど!いろいろ考えて弾いていたようです。この30番でも、音符と音符の「間」を意識した演奏。時間と空間は対義語であるけれど、時間芸術の音楽に、空間的なものが感じられると表現に奥行きのようなものが出るものです。また、8番の最終楽章と、30番の第一楽章の冒頭は、左右の手がまるで対話あるいは呼応しているかのような箇所がありますが、私は曲をまたいで対比的に弾く意図を感じました。私、ベートーヴェンの8番と30番と続けて弾くことに、ピアニストとしての意気が感じられ、頼もしく感じられました。20代前半の等身大のベートーヴェンの演奏としては、なかなか良いと思いました。15歳の「熱情ソナタ」を聴いて以来、私はソンジンが生来の「ベートーヴェン弾き」と思っています。

ベートーヴェンの30番の最終楽章の厳格な変奏曲の後、休憩はさんでフランスの香りがするドビュッシーの「映像」第1集」とショパンの第3ソナタ。
私は音で空間を描くようなドビュッシーの音楽が好きです。「映像」はミケランジェリの歴史的な名盤があります。ガラス細工のような繊細でキラキラした演奏。ソンジンはもともと透明感があるキレイな音色の持ち主なので、その特徴は出ていましたが、それ以上に、旋律ラインを太めの音でたっぷりと弾いていたのが斬新でビックリでした。これはクラウディオ・アラウの演奏と印象が同じもの。ベートーヴェン弾きのアラウが弾くドビュッシーっておもしろい…と思っていましたが、ソンジンにもアラウににた音楽的な感性があるのかなと感じました。ミケランジェリの演奏がパステルの色彩で輪郭が曖昧なモネ系とするなら、アラウは色彩的で輪郭がはっきりしたゴーギャンでしょうかw。
最後はショパンのソナタ第3番。ショパン・コンクールの覇者だけあって、よく弾き込んだ跡が感じられました。ショパンがあまり好きじゃない私でも、まあまあ受け容れられた演奏でした。歌い過ぎず、全体の構成を見据えた演奏。最終楽章は、若々しい高揚感で溢れていて、場内は熱狂の渦でした。

アンコールは2曲。ショパンのスケルツォ第2番とリストの「ラ・カンパネラ」。この2曲は8年前の佐川文庫におけるデビュー・リサイタルでも弾かれた曲。この思い出の曲を水戸でまた聴けたというのは感慨深いものがありました。

最後にソンジンの演奏を聴いて2つ言い残したことがあります。
①前半と後半のプログラムを入れ替えた方が、ソンジンの個性が出たと思います。「ショパンコンクールの覇者」という枕詞から脱し、いちばん弾きたいと感じられた音楽をメインにした方がよいと私は思っています。
① アノの音は、透明感があってキレイ。しかしやや硬質感がある。ピアノの鍵盤を叩いているという一印象があります。これは私の嗜好にすぎませんが、ロシア出身のピアニストに見られる「木の箱」を響かせる感じが出て来ると、もっといい。ロシア的な奏法を学ぶと、より表現のでるのではないかと思いました。