レオンスカヤのシューベルト・チクルスⅢ@東京春祭

2018.04.09.Mon.22:20
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昨日の上野公園の空です。新緑の右には「鳳凰」のような雲。
初夏っぽい陽気の中、ちょっと肌寒い風が抜ける感じは
シューベルトの音楽の似姿のように感じられるのは私だけでしょうか。

4/8日曜の昼、「東京・春・音楽祭」で、グルジア出身のエリザベート・レオンスカヤのシューベルト・チクスルⅢを東京文化会館小ホールで聴いてきました。レオンスカヤは計6回の演奏会で、シューベルトのピアノ・ソナタなど主要な作品を演奏します。私は午後からの「ローエングリン」公演だけを聴く予定でしたが、午前中にレオンスカヤのリサイタルがあることを知り、急遽、チケットを買いました。このチクルスの中、聴けるのはこの1回だけですが、それでも満足できました。滅多に演奏されないソナタ2番ハ長調D279,13番イ長調D664,16番イ短調D845というプログラムも魅力的でした。

はじめて実演を聴いたレオンスカヤは、包み込むような優しさ75%、そして峻厳さ25%、強めの陽と控えめな陰の音色が相克する演奏でした。薫陶をうけたリヒテルとの違いは、どことなく素朴さが感じられるところでしょうか。(学生の時、たった一度だけリヒテルを聴いたことがあります。)哲人リヒテルに対して、文学を語るようなレオンスカヤと言えるかな。使用されたヤマハのピアノから、オペラ歌手がお腹の底から出すような豊かな“声量”。鍵盤を叩くのではなく、ピアノの箱そのものを響かせる奏法はロシアのものに他なりません。彼女は今年で74歳。時々、指の動きが鈍くなる箇所はありましたが、「傷」になるほどではありません。東京文化会館の小ホールは、ステージに向かって右手の直接音を聴く側よりも、左手側の反射音が響く側の方が私は好きです。しかもその席からは、レオンスカヤの手がよく見えました。肉厚で大きい手でした。鍵盤を掴むように指が動いていた。

一曲目は、シューベルトが18歳の時に作った2番。これは未完の作品。冒頭、モーツァルトのソナタでみられるトランペット風の華やかなファンファーレ。初期の作品らしい簡素な作品ですが、初夏の草原を駆け抜ける風のような爽やかな演奏。第3楽章は舞曲風のメヌエット。シューベルトはここで作曲を断念。今回は異例ですが、第4楽章にあたる位置に「アレグレット・ハ長調D346」が置かれて演奏されました。このつながり方は、交響曲第7番「グレイト」の様式感と似てますw。

二曲目が13番。第1楽章冒頭、キラキラとした太陽のもとで、清涼感がある風が吹いてきたり、雲でちょっと陰ったり。3月末にサクラが早咲きしたため、4月初頭というのに5月のような上野公園の景観を思わせる演奏。「楽興の時」を思いださせるタン・タタ・タン・タタというリズムが心地よい。2番とちがって、完全にシューベルトの音楽になっている感じがします。私、フッとこの曲はイ長調であることを思い出しました。午後から聴く「ローエングリン」の第一幕への前奏曲と同じ調性。やはりこの曲にも「光」のようなものを感じさせるニュアンスがありました。

休憩をはさんで16番。美しい旋律の中に悲劇性を込め、かつ跳躍が多い音型と次々にやってくる転調に、作曲者の気持ちの振幅が感じられました。後期の三大ソナタ(19~21番)へのアプローチとなるニュアンスも詰まっていました。面白かったのは第2楽章。キレイな変奏曲になっていました。シューベルトはベートーヴェン先輩を思ったのでしょうか?レオンスカヤはシューベルトの言葉を代弁し、かつ交響曲のような構成感で演奏していました。

アンコールが終わったのは13時5分。マイミクのGRFさんが待つ稲荷町のレストランへ、脱兎のごとく会場を出ましたとさ。

■エリザベート・レオンスカヤ|ピアノリサイタル
■シューベルト・チクルスⅢ
■2018年4月8日(日)11:00@東京文化会館小ホール
シューベルト:ピアノ・ソナタ 第2番 ハ長調 D279
シューベルト:ピアノ・ソナタ 第13番 イ長調 D664
【休憩】
シューベルト:ピアノ・ソナタ 第16番 イ短調 D845
(アンコール)シューベルト:5つのピアノ曲 D459a より 第3番 Adagio


「お風呂が沸きました」の音楽

2018.04.07.Sat.17:05
わが家のお風呂のお湯はりが終わった時に流れる音楽って、ずっとノーリツ社のオリジナルだと思っていましたが、ちがっていました。この動画の50秒ぐらい経ったところででてくるメロディそのものでした。テオドール・エステン作曲の小品集「子供の情景」作品202の中の“お人形の夢と目覚め”という曲であることを、ある方のブログではじめて知りました。これもクラシック音楽と言ってよいのかな。

https://www.youtube.com/watch?v=6omERSjelxI



金の卵たちの演奏会@茨城国際音楽アカデミーinかさま

2018.04.01.Sun.22:38
トルソ

私が建築学科の学生だったころ、都内の美術研究所で石膏デッサンを習っていた時期があります。(わりと上手でしたw。)好んでよく描いたのは胴体だけのトルソーです。たとえば写真にある“フォーンのトルソー”。それと“ベルデヴェーレのトルソー”。この2体は、ウフィッツィ美術館やヴァチカン美術館に実物があり、外遊した時、それらに対面した時は感動しました。トルソーとはギリシアやローマの遺跡から発掘された,頭・腕・脚などが失われた彫像のこと。ルーヴル美術館にある両腕がない“ミロのヴィーナス”や頭部がない“サモトラケのニケ”は、完全なかたちではありませんが、多くの人を魅了しています。“ニケ”は、ナイキnike社の語源でもあり、その翼はナイキ社のマークの原型になっているのは有名な話です。

ちょっと前置きが長くなりました(苦笑)。
先週3/28に閉幕した茨城国際音楽アカデミーで私がもっと楽しみにしているのは、講師のコンサートではなく、最終日に行われる「ステューデント・コンサート」です。このアカデミーで認められた受講生による演奏会です。このアカデミーに参加している受講生はすでに国内外のコンクールで結果を出している中高生が多く、その方面ではかなり有名な方ばかりです。しかしまだ発展途上であることは確かです。トルソーのように何か欠けていたとしても、秘められた才能を感じさせてくれるような音楽家の卵に出会った時、考古学者が遺跡の中からトルソーの欠片を発見した喜びと似ている気がするのです。

ピアノで印象に残ったのは谷昴登くんと千葉百香さん。二人とも中3か高1ぐらい?

谷さんは昨年の「ステューデント・コンサート」でショパンのスケルツォ第3番を弾きましたが、今年はシューマンの幻想小曲集op12から“夢のもつれ”と“歌の終わり”。まったく別のピアニストに成長していました。音色がブリリアント、鍵盤を叩くというより木の箱を鳴らしているような響き、それと演奏そのものにスケール感がありました。休憩時間、私がロビーで休憩していたら、その谷くんが目の前を通りかかったので、私、彼に話しかけました。
「谷さんのピアノ、さきほど聴きました。数年前の佐川文庫や昨年の演奏に比べて、ものすごく成長しましたね。ビックリした。音が輝くようだった。それとピアノの箱を鳴らすような響き。ものすごく進歩したなぁと思いましたよ。」
「ありがとうございます。」
「谷さん、奏法を変えたの?ロシアのピアニストの雰囲気を感じたんだけど…」
「分かりましたか?実はちょっと習いました。」
「やっぱり。来年も笠間に来てね。佐川文庫の館長さんにも谷さんの演奏のこと、伝えておきますw。」
「はい、よろしくお願いします。」
という数分のものでした。8年ほど前に佐川文庫で聴いた牛田智大くんのデビュー・リサイタルに匹敵するビックリでした。

千葉百香さんが弾いたのはショパンのバラード第4番。彼女は宙を仰ぐように弾いていました。驚いたのは、ほぼノーミスで演奏したということではありません。内声の音がよく響いていて、まるでメゾソプラノ歌手が歌っているような…。ショパンの音楽で左右の手が別々というイメージがあるのですが、彼女はシューマンのようなに左右の親指と人差し指を有機的に関連させるような弾き方をしているように見えました。私は歌手のエディット・ピアフ、美空ひばり、高橋真梨子、松任谷由実らの歌声には“ゆらぎ”があることはよく指摘されていますが、千葉さんの内声部の響きから、それらと同じような体感をしました。私、瞬間的に芳香のようなものさえ感じましたよ。(本当!)以前、紀尾井ホールでペーター・レーゼルのモーツァルトを聴いた時にも同様なことを感じました。これは滅多にないことですw。

ヴァイオリンで印象に残ったのは、河井勇人くん、服部百音さん、千葉水晶くん、土岐祐奈さん、小川恭子さん。このアカデミーのヴァイオリン受講生、みなレベルが高い。

服部百音さんは小学生の頃から笠間へ来ていました。ワックスマンの“カルメン幻想曲”を堂々と弾いていたことをよく覚えています。都内ではすでにプロとして活躍しているので、このアカデミーに来る必要性をあまり感じないのですが、それでも師匠のザハール・ブロンのレッスンを受講するためにはるばる笠間まで来ているようです。今回、彼女が弾いたのはイザーイの無伴奏バイオリンソナタ第4番。音色が他の受講生と全く違いました。おそらく良い楽器を使っているのでしょう。彼女の演奏には「凄み」があります。緩急、強弱、歌い方など自在に操っていた。ヒラリー・ハーンのデビュー盤のバッハを思い出させます。ハイティーンの演奏とは思えない風格がありました。

千葉水晶くんは久々にアカデミーに参加したのかな?ショスタコのヴァイオリンソナタの第2楽章。クールでスタイリッシュな演奏。作曲者の気持ちにすこしでも寄り添って弾こうとしていたように見えました。この曲、こんなにイイ曲であったことを彼に教えてもらった感じです。

来年の笠間のアカデミーを楽しみにしています。

音楽家の卵の公開レッスン@ 茨城国際音楽アカデミーinかさま

2018.03.26.Mon.22:31
3/21にはじまった「茨城国際音楽アカデミーinかさま」の初日に続き、3日あけて昨日3/25に4日目を聴いてきました。本当ならこの日は水戸芸術館でマレイ・ペライアのピアノリサイタルを聴くはずでしたが、彼の体調不良によって来日公演が中止になってしまい残念でした。(私、その払い戻し金を4/26のマリア・ジョアン・ピリスとリリット・グリゴリアンのデュオ・リサイタルに振り替えることにしましたw。)

そういうこともあって、3/25は笠間市の音楽アカデミーへ。頑張って早起きしました。私はこのアカデミーの醍醐味は有名講師のコンサートよりも、「音楽家の卵」の公開レッスンと考えています。その日は朝イチで行われる東京芸大学長でヴァイオニストの澤和樹氏の公開レッスン。出演するのは、服部百音、河井勇人、千葉水晶。この3人は国内外のコンクールですばらしい実績がある将来のスター候補生。特に服部さんは高校生ですが、コンサート出演やTVで見かけることも増えました。彼らは小中学生のころからこのアカデミーに参加しているので、ほぼ毎年、その成長を見てきています。サッカーでいうU20日本代表世代と言ったところでしょうか。

ひとり45分のレッスン。
最初にザハール・ブロンの秘蔵っ子・服部百音さんがイザイの無伴奏ヴァイオリンソナタ第4番の第一楽章。非常に華やかな音色。澤氏の指摘は「かなりよく弾けている。しかしずっとハイテンションで弾いているので、聴き手に緊張をずっと強いるような感じがある。ぬくところがあると、余裕というか、メリハリが出てくるよ」と指摘。私も同じことを考えていました。サッカーでも緩急自在のテクニックが要求されるのと似てるw。その他、ヴァイオリンと弓の位置関係など細かい指導を受けていました。

次は、河井勇人くんがシューマンのヴァイオリンソナタ第2番。柔らかさと大物感がある。第一楽章を弾き終えて、澤氏とおもしろいやり取りがありました。
「この曲を作ったのは誰?」
「シューマンです。」
「では、この曲は誰に献呈されましたか?」
「……。たしか初演はヨアヒムとクララ」
「じゃなくて、誰に献呈されたか!」
「……。」
「答えはメン・コンを初演したフェルディナント・ダヴィット。冒頭のレラファレという音型がダヴィット(david)になっています。シューマンの音楽は言葉を音にのせて弾くことが重要。パガニーニやイザイのようなヴァイオリンの名人がつくった曲とは弾き方が違うことを理解して弾きなさい。」
と指導していました。私も勉強になりますw。
その後の河井くんの弾き方も変わったことが言うまでもありません。
※D(レ)、A(ラ)、V=F(ファ)、D(レ)
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3番目は千葉水晶くんはエルガーのヴァイオリンソナタ。彼の音の持ち味はクールな感じでしょうか。時々、ビックリするような冴えた表現や音が出てきました。私は彼が以前に弾いていたラロの「スペイン交響曲」を表情豊かに弾いていたのが印象的でしたが、今回はちょっとイメージがちがっていました。
私、前日、東京出張でちょっとお疲れ気味。ここで退室。

外はサクラが咲きはじめていました。今、聴いてきた3人の音楽家の卵の音色のイメージに、「雪月花」という言葉が降りてきました。華やかな服部さんが「花」、温かみのある明るい音色の河井くんが「月」、繊細でクールな千葉くんが「雪」。

午後からは川久保賜紀とザハール・ブロンのアフタヌーン・コンサート。それぞれ1時間ほどのプログラムを受講生たちや一般客と混じって聴いていました。川久保はブラームスのヴァイオリン・ソナタ3番の他、エルガーやクライスラーの小品など。ブロンはシュニトケ、チャイコフスキー、ストラヴィンスキーといったロシアの作曲家の作品。やはり中堅・ベテランの音楽家の演奏は、演目の聞かせ処をしっかりと押さえた堅実なもの。それが緩急であったり、音色のパレットの豊富さであったり…、何度も弾いている曲であっても、今、初めて出会ったかのような新鮮さであったり…。ブロンは決して美音じゃないのですが、ボウイングのプレゼンテーションを「卵」たちの前でしているかのようでしたね。

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伊藤恵ピアノリサイタル@第14回 茨城国際音楽アカデミーinかさま

2018.03.23.Fri.10:10
3/21、春の冷たい雨の中、車を飛ばして笠間市へ行ってきました。毎春、私が楽しみにしている茨城国際音楽アカデミーを聴くためです。今回で14回目。このアカデミーではピアノとヴァイオリンを中心とした講習が主となります。一方で指導講師等のコンサートや講演会なども行われ、クラシック好きじゃない方でも楽しめるプログラムが用意されています。このアカデミーの受講生のレベルは非常に高く、国内外のコンクールの上位入賞者を数多く輩出しています。昨日は、笠間公民館で講師の伊藤恵のピアノリサイタルを聴き、その後、別会場で2名の受講生の公開レッスンを聴きました。

まずは「シューマン弾き」で有名な伊藤恵のピアノリサイタル。演目は以下のようなものでした。

■伊藤恵|ピアノリサイタル
■2018年3月21日(水・祝)14時~@笠間公民館大ホール
・ベートーヴェン:ピアノソナタ第23番ハ短調op.53 「ワルトシュタイン」
・ベートーヴェン:ピアノソナタ第21番ヘ短調op.57「熱情」
【休 憩】
・ショパン:12の練習曲集op.25
(アンコール)シューマン:「幻想小曲集op12」から第2曲“飛翔”

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「ワルトシュタイン」の冒頭、オッ!と驚いた箇所がありました。アレグロ・コン・ブリオで弾かれる馬車が駆けぬけていくようなフレーズ。和音の連打にある最初の低いドの単音(譜に赤い○を付けた音)が明瞭に聴こえたことです。この曲はいろいろなピアニストで実演やCDで聴きましたが、この単音は和音の連打で、どうしても埋もれてしまうことが多い。次の「熱情ソナタ」の冒頭の序奏に出てくる「運命の動機」のところ、誰が聴いてもそれと分かるような弾き方。ピアノ受講生に“楽譜をちゃんと読んで弾くこと”を講師が体現して示しているかのようでした。教育的指導?w。
伊藤が弾いたベートーヴェンの2曲のソナタで印象に残った点は、内声部の音を意識していたことと、感情が強まるところと夢見心地のところを対比的に弾いていたところ。これはシューマンの音楽でよく見られる特徴とも言えそうです。

後半はショパンの練習曲集op25。ショパンの練習曲集にはop10とop25の2セットあります。この2つの練習曲はバッハの平均律を意識していることは明らか。前者op10は「別れの曲」「黒鍵」など単品ではショパンの代表作と呼ばれるものがあります。しかし全部を続けて聴くと、私には不満がありました。それは調性的な配列の破綻があるからです。op.10では、長調と短調の平行調の関係の曲を組み合わせなのに、7番と8番が長調同士のカップリングになっていて整合性が取れていません。一方で後者op25はop10の反省を踏まえていると考えられます。op25では、op10で試みた長調と短調を組み合わせた作り方を止めて、12曲中それぞれの隣り合う曲同士の調性の関連性(平行調・同主調・属調など)を考慮して作曲されています。伊藤が弾くop25は、12の単品から成り立つ練習曲と言うよりも、12曲をひとつにみた全体像として捉えたらどうかしら?と問いかけているような演奏だった。伊藤のop25の演奏には2つの山がありました。最初の山は超絶技巧で有名な6番嬰ト短調、そして2つ目は、リストのロ短調ソナタのような10番、難曲「木枯らし」の11番、うねるようなアルペジオの12番。これらで右肩あがりの高い崖をつくっていました。私にとって練習曲集op25は、シューマンの「謝肉祭」「クレイスレリアーナ」のような“物語的流れを持つファンタジー”と捉えた方が理解しやすいです。実際、伊藤は大河のようなゆったりとした流れの中で、骨太さと剛直さを伴ったパフォーマンスを聴かせてくれていました。

アンコールの前に伊藤のスピーチがありました。
「ベートーヴェンのソナタを人前で弾くのは超久しぶり。このプログラムを組んだ時、大きな覚悟を持って臨んだので緊張が半端なかった。本当に疲れた!テクニック以外の内面的な部分をもっと大切にして今後も弾いていきたい」という主意だったと思います。そして弾かれたのが十八番のシューマンの「飛翔」。アカデミーに臨むピアニストの卵たちのスタートだけじゃなく、講師の伊藤自身もそろそろ還暦なので、ピアニストとして第二のスタートをかなり意識していたかのようでした。

終演後、時計を見たら16時前。
私は車までダッシュして、公開レッスンが行われている会場へ向かいました。世界的な名ヴァイオリン教師ザハール・ブロンの公開レッスンを受講していたのは、2016年の日本音楽コンクール1位の小川恭子。曲はシューマンの幻想曲ハ短調op131。小川の演奏を聴いて、ブロンは自演しながらフレージングやボウイングなど細かいところを指導。演奏がどんどんよくなっている様子は手品のようです。
次に別室で聴いたのは桐朋音大教授村上弦一郎の公開レッスンで、小6か中1ぐらいの女子が弾くハイドンのソナタ59番。指は非常によく動くけれど機械的。音楽にはなってない彼女の演奏を聴いた村上は、「オーケストラの楽器を想像して弾いてみましょう。ヴァイオリン、チェロ、フルート、オーボエの音をさがしてみよう。それとこの曲の中でいちばんおもしろいと思う箇所は何処かな?」など、まずハイドンの音楽的特徴を語りながら指導していました。その後の演奏内容がガラッと変わったのは言うまでもないです。
このアカデミーのおもしろさは、講師の指導で受講生の演奏が大きく変容するところに立ち会うことができることです。来週は有望な受講生の公開レッスンがあるので楽しみです。