マリア・ジョアン・ピリスの最後の日本ツアー

2018.01.20.Sat.10:38
昨日、知ったことですが、4月に来日するピアニストのマリア・ジョアン・ピリスは、今年中に引退し、今回が最後の日本ツアーになるらしい。私はピリスのCDのはモーツァルトやシューベルトなど持っていますが、まだ実演は聴いていません。今日10時からチケットの一般販売が開始されました。

東京では2回しかリサイタルがありません。どっちに行くか、悩みました。ピリスが弾くベートーヴェンの32番のソナタも魅力的ですが、やはりモーツァルトやシューベルトが聴きたいから4/17の方かな。モーツァルトのK333のソナタは私の大好物なのです。さきほど激戦の中、希望日4/17のチケットをゲットしました。この日はピリスの日本における最後のリサイタルとなりますね。

■2018年4月12日(木)19:00開演 サントリーホール
■マリア・ジョアン・ピリス ピアノ・リサイタル
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 Op.13「悲愴」
シューベルト:3つのピアノ曲(即興曲集) D946
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調Op.111

■2018年4月17日(火)19:00開演 サントリーホール
■マリア・ジョアン・ピリス ピアノ・リサイタル
モーツァルト: ピアノ・ソナタ 第12番 ヘ長調 K.332
モーツァルト: ピアノ・ソナタ 第13番 変ホ長調 K.333
シューベルト:4つの即興曲 Op.142, D935

私を構成する9枚

2017.12.28.Thu.23:22
昨日、mixiで知り合った方から、「私を構成する9枚」という遊びを教えていただきました。これまで自分が影響を受けたCDを9枚選ぶというシンプルなルールです。ちょうど9枚は3×3になるため、曼荼羅のように並べて写真を撮ります。2×2や4×4というのもアリかもしれませんが、3×3が程よいど思います。ツイッターで“#私を構成する9枚”で検索すると、人それぞれのものが多種多様でてきますね。
私、昨日からずっとその9枚を考えていました。私が聴くそのほとんどがクラシック音楽です。ひとつの曲でも十数種類もっているものがあります。好きな作曲家も9人に絞るのは困難。その中でルールを決めました。作曲家が被らないように選ぶこと、演奏者が被らないように選ぶこと、③交響曲全集、ピアノソナタ全集といった全集系は選ばないことです。単純に好きなCDを9枚並べるのではなく、自分と音楽との向き合い方が透けてみえるようなものにしたいと思いました。選んだのは以下の9枚。

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①~⑨は序列ではありません。でも①は「前奏曲第1巻」、②③は「交響曲第2」「第3」なので、1・2・3と意味ありげに並べてみました。中央の位置の⑤は「9番」で締めました。

①|②|③
④|⑤|⑥
⑦|⑧|⑨

①ドビュッシー|前奏曲集第1巻 ミケランジェリ(p)
②ブラームス|交響曲第2番ヘ長調op73 ジュリーニ指揮ロサンゼルスpo
③ベートーヴェン|交響曲第3番変ホ長調op55 ショルティ指揮ウィーンpo
④モーツァルト|ピアノ協奏曲第23番&26番 グルダ(p)&アーノンクール指揮RCO
⑤マーラー|交響曲第9番ヘ長調 バルビローリ指揮ベルリンpo
⑥シューベルト|即興曲D899&D935 ルプー(p)
⑦バッハ|平均律クラヴィーア リヒテル(p)
⑧J.シュトラウスⅡ世|喜歌劇「こうもり」クライバー指揮バイエルン国立歌劇場
⑨ワーグナー|楽劇「ニーベルングの指輪」クナッパーツブッシュ指揮バイロイト祝祭
※⑨は13枚BOX。「ニーベルングの指輪」は4つの楽劇から成る大作。しかし4つの楽劇で1曲と考えられていますので悪しからずw。
選んだポイントについて記します。

・作曲家が被らないようにするというのはたいへんでした。実際のところ、ハイドン、シューマン、メンデルスゾーン、ブルックナーが漏れてしまいました。
・一般的に言われている名盤ではなく、私が一生聴き続けたいと思うCD。
・ウィーンpo、ベルリンpo、RCOの三大オケはバランスをとりました。ボランチ!
・好きな曲と敬愛する音楽家という観点からバランスも重要。
・私が生で聴くことが叶わなかった音楽家のCDを買い漁るのは言うまでもありません。聴きたくても聴けない音楽家に対しての渇望が強いのです。特にミケランジェリ、グルダ、ジュリーニ、クナッパーツブッシュ。
・私が生で聴くことができた音楽家で衝撃的だったのはリヒテル、クライバー、ルプーです。その鮮烈な記憶から、彼らのCDも買い漁ってしまうのは自然です。

①ミケランジェリの研ぎ澄まされた冴えた音を生で聴いたらどんな音なのだろうとずっと考えています。いちばん特徴が出ているのはドビュッシーの音楽かな。
②ブラームスの音楽で一番好きなのが交響曲第2番。その美しい旋律を、歌う指揮者ジュリーニが振ったCDが大好きです。
③ベートーヴェンの音楽で一番好きなのが交響曲第3番。ショルティが「指輪」の全曲録音をしている時に録音した「英雄」はワーグナーその人のようです。
④グルダはウィーン子なのに異端児で変人。でもモーツァルトやベートーヴェンを自然体で弾ける稀有の人です。モーツァルトの23番は大好物です。
⑤マラ9は名盤がたくさんあります。私はバルビ節を採りました。はじめてマラ9を聴いたのもこのCDでした。思い出が多い録音です。
⑥ルプーも大好きなピアニスト。はじめて聴いたのは楽聖の時。小さい音がホールの隅々まで行き渡る響きにビックリ。ロシアピアニズムの洗礼はルプーから受けたと言えます。シューベルトは名曲が多いので悩みましたw。
⑦リヒテルのリサイタルは衝撃的でした。真っ暗なホールの中でランプを灯しての演奏。この平均律クラヴィーアは私にとって「ご飯とみそ汁」のようなもの。
⑧クライバーのライブは2回聴けました。熱狂しました。私のクラシック史に残る事件です。「こうもり」序曲と「雷光と雷鳴」はアンコールで演奏されました。クライバーは名盤がたくさんありますが、「こうもり」が一番思い出深いです。
⑨私は決してワグネリアンではありませんが、「指輪」は知らない間にクナ、ショルティ、カラヤン、ハイティンク、ヤノフスキ、サヴァリッシュを買っていた。やはりクナッパーツブッシュが圧倒的に風格があってすばらしい。クナのワーグナー、生で聴いてみたかったなぁ。

以上を総括すると「私を構成する9枚」は
自身のクラシック音楽への渇望と記憶を呼び起こすものから成るようです。

2017年に聴いたコンサート

2017.12.27.Wed.15:10
私の「観る」を目的とする趣味といえばサッカー、美術、音楽が三本柱です。手帳を見ながら、今年、どんな音楽会へ行ったかまとめてみました。回数は20回。月に1.6回のペースです。地方在住であることと、サッカー観戦の方が熱心なので、頻度としてはまずまずでしょうか。

【ジャンル】
管弦楽5回
室内楽3回
ピアノ8回
歌劇・声楽3回
バレエ1回(←中村恩恵×新国立「ベートーヴェン・ソナタ」)

今年、ピアノ・リサイタルへ行くことが増えたのは、マイミクさんに紹介していただいた原田英代著『ロシアピアニズムの贈り物』を読み、ロシア系のピアニストへの関心が再燃したことが原因です。

【場 所】
福島1回
茨城4回
栃木1回
東京12回
神奈川2回

今年は東京出張のついでに、夜、何かを聴いてくることが多かったです。約束したわけでもないのに、ホワイエでマイミクさんと合うことも多かったです。聴きたい音楽の傾向が似ている方が多いということを示しています。以前は毎月のように行っていた水戸芸術館へは今年は2回だけ。これは聴きたいと思う音楽会が激減したことに因ります。吉田秀和前館長が亡くなってから魅力的な企画が減ったのは残念です。

【印象に残った音楽会】(序列はありませんw)
・イリーナ・メジューエワ|ピアノリサタル(8/26@東京文化会館小ホール)
・東京春祭・ワーグナー「神々の黄昏」(4/4@東京文化会館大ホール)
・紀尾井ホール室内管弦楽団|第109回定期演奏会(11/24紀尾井ホール)

メジューエワのピアノ・リサイタルはなんと3回行きました。3月は銀座ヤマハホールでシューベルト・プロ。8月は上野でベートーヴェンの後期ソナタ・プロ、12月は栃木の大田原市で「展覧会の絵」とショパンやリストなどの小品。特にいちばん感銘を受けたのが8月のベートーヴェンのリサイタル。28・30~32番が演奏されました。ロシアピアニズムを体現できるピアニストのひとりでしょう。ピアノの響かせ方、読譜の深さ、音楽への誠実さなど申し分ありません。晩年のベートーヴェンの透徹した言葉が音楽から感じられました。ひさびさに音楽を聴く感興を感じさせていただきました。

ワーグナーの楽劇「神々の黄昏」は演奏会形式でした。しかし奇妙な演出の公演になるのなら音だけで私は十分です。音楽で場面が想像できます。長時間の公演でしたが、高齢のヤノフスキとN響は熱演でした。主役のジークフリートが病気で降板し、代役の出来がイマイチだったことだけが残念でした。

紀尾井ホール室内管の第109回定期(指揮:サーシャ・ゲッツェル)で演奏されたシューマンの交響曲第2番ハ長調にはビックリしました。やや厚塗りと言われるシューマンの交響曲の響きが、ここまで繊細かつ明晰に聴けました。
以上の演奏会で共通するのは、演奏だけでなく、聴く側の客層の質、ホールのホスピタリティという3要素が良かったことも特記しておきたいです。

そのほかでは、横浜で聴いたパーヴォ・ヤルヴィとN響によるマーラーの交響曲第6番「悲劇的」や、紀尾井ホールで聴いたエリソ・ヴィルサラーゼとアトリウム弦楽四重奏団が共演した室内楽も良かったです。

来春、すでにチケットを買ったのは東京春祭の「ローエングリン」、水戸でのペライア、チョ・ソンジンのピアノリサイタルなどです。もし買えたらの話ですが、ヤンソンス&バイエルン放送響の来日公演も聴きたい。
来年も良い音楽を聴きたいですね。

イリーナ姉さんの新書がお宝本になってしまったw

2017.12.23.Sat.19:49
昨夜、栃木県大田原市の那須野ヶ原ハーモニーホールでイリーナ・メジューエワのピアノリサイタルがありました。今年、最後の音楽会は車で片道2時間の遠出となりました。演目は「展覧会の絵」やショパンやリストの曲など。ショパン嫌いの私でも彼女の演奏なら聴いてもいいよね…と思える内容で満足しました。感想は後日、UPします。
終演後、CD購入者のためにサイン会が行われていました。私、たまたまバッグに入っていた彼女の新書にちゃっかりサインをいただいてきました。ただの新書がお宝本になってしまったw。私がカバンから新書をパッと取り出すと、
イリーナ姉さん、「わぁー!」と驚いていましたよ。
ロシア人なのに日本語ペラペラ。

私:「この本、とてもおもしろかったです」
イリーナ姉さん:「ありがとうございます」
私:「続編も期待しています。」
イリーナ姉さん:「そうなるといいですね」

今年はイリーナ姉さんのリサイタルを3回聴きました。来年2/24、東京文化会館で彼女のリサイタルがあります。演目はリストのロ短調ソナタやラフマニノフのピアノソナタ2番など。聴きに行きたいのですが、この日、あいにくJリーグの開幕日なんですよね(涙)

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「クライスレリアーナ」雑感

2017.12.23.Sat.13:35
今年はロシア系のピアニストのリサイタルを聴くことが多い年でした。11月末に東京・紀尾井ホールでモスクワ音楽院の名教師ネイガウスやザークらに薫陶を受けたグルジア出身のエリソ・ヴィルサラーゼとアトリウム弦楽四重奏団による室内楽を聴いたばかりでしたが、私、ツィッターでエリソが東京音楽大学でミニ・コンサートと公開レッスンをするという情報を得、観覧希望のオファーを出したら招待券を送っていただけました。私、このためだけに上京しましたw。詳細は以下の通りです。

■エリソ・ヴィルサラーゼ ミニ・コンサート&公開レッスン
■2017年12月7日木曜@東京音楽大学・100周年記念ホール
□ミニ・コンサート ピアノ:エリソ・ヴィルサラーゼ
♪ベートーヴェン:ピアノソナタ第25番 ト長調op79
♪シューマン:クライスレリアーナop16
♪(アンコール)シューベルト=リスト:ウィーンの夜会第6番S.427-6
□公開レッスン  
♪シューマン:暁の歌op133 (受講生)藤田真央

エリソのミニ・コンサートの演目は当日に発表されました。彼女はシューマンの演奏の評価が高いので期待が募ります。演奏そのものは素晴らしいものでした。たいへんな難曲ですが、70歳近いエリソは軽々と弾いていました。内声部の声がシューマンのつぶやきのような声がよく聴こえてきました。
一方で、気になったことが2つありました。
ひとつめは、冒頭部分。ちょっとゆっくり目で徐々にエンジンの回転を早めていくような入りでした。スロースターター!一般的な演奏は、演奏前からテンション高めでガツガツと弾きはじめる人が多いからです。ホロヴィッツやアルゲリッチのCDではそんな感じです。ちょっとビックリしました。一方でケンプやルプーは比較的穏やかな入りだったと思います。
ふたつめは、楽曲の最後のところ。いつ終わった分からないような曖昧というか微妙な終わり方。諧謔的なフレーズがだんだんと弱くなるような終わるのですが、アレッ!気がついたら終わっていた…という印象。
最初の入りと、終わり方がなんとも締まらないなぁ…という不満と疑問が残りました。

帰宅して数日後、ネットで注文していたイリーナ・メジューエワ著『ピアノの名曲-聴きどころ弾きどころ』(講談社現代新書)が届き読みはじめた時、エリソのクライスレリアーナの弾き方の疑問が氷解しました。この著作で、イリーナはベートーヴェンやショパンなどのピアノ曲のアナリーゼをしています。シューマンの曲ではクライスレリアーナが選ばれています。一般的にクライスレリアーナは、作家でありすぐれた画家でもあり、また音楽家でもあったE.T.A.ホフマンの書いた音楽評論集の題名から引用されていて、この作品からシューマンが霊感を得て作曲されたと言われています。またシューマンはその中に登場するクライスラーという人物(ホフマンその人)を自分自身、さらに恋人(後の妻)クララの姿にも重ね合わせたとも言われています。

一方でイリーナは「クライスレリアーナ」というタイトルから別のニュアンスがあることを著作で指摘していました。

クラウスkraus=くしゃくしゃの
クライスkreis=円
クライゼンkresen=まわる
シューマンの恋人クララC(K)lara という響きも!

ドイツ人しか分かり得ない意味が含まれているそうです。しかも円や回転という運動性の概念が含まれていて、詩あるいは死に憧れて動き回るイメージもある。そして8曲からなるクライスレリアーナ全体がサイクル形式になっていると説明していました。

それを知って、私はエリソの演奏は、第8曲目の「結」の部分と、曲の冒頭の「起」の部分がつながっていているというイメージだったのではないかと考えるなら、あのような演奏になったことに合点がいくことに気づきました。東洋的な輪廻的のイメージは、クララへの永遠の愛のイメージとも符合します。そう思いながら、私が持っているいくつかのクライスレリアーナを聴き比べてみると非常におもしろかったです。

名盤として有名なホロヴィッツやアルゲリッチのCDは超絶技巧を駆使した非常にピアニスティックでスリリングな演奏です。ケンプやルプーのCD、そしてライブで聴いたエリソの演奏は派手さはないですが、イリーナが書いていたようなサイクル形式を感じさせるものになっているような気がしました。クラシック音楽の演奏は楽譜に忠実に演奏するのが原則ですが、題名からも読み取れるものもあるという発想はいままで私にはありませんでした。そういう点では、エリソの演奏とイリーナの著作はそういう点でなかなか興味深いものがありました。

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