リュッケルトの詩による五つの歌と映画『仮面の中のアリア』

2018.02.24.Sat.23:58
2/25日曜、メゾソプラノ歌手の藤村実穂子のリサイタルを水戸芸術館で聴きます。演目にあるマーラー作曲「リュッケルトの詩による五つの歌」を予習するつもりで、私が持っている4種類の演奏を聴いてきました。ディートリヒ・フィッシャー=ディスカウ、トーマス・ハンプトン、ジャネット・ベーカー、白井光子。この曲のおもしろさは、5曲の演奏順が特に定められていないので、歌手の裁量で曲順を決めるという自由が与えられることです。したがって歌手が自分の意図を設計できる。上記の歌手も、それぞれの順番で歌っています。この件は日を改めて記したいと思います。

この「リュッケルトの詩による五つの歌」の中で、最も有名な曲は“わたしはこの世に忘れられ”だと思います。学生だった30年ぐらい前に見た映画『仮面の中のアリア』で流れていました。この映画の主演はバリトン歌手のホセ・ファン・ダム。彼はカラヤンの重用された名歌手。この映画を見て、私は声楽曲のおもしろさを知るきっかけになったと言ってもよいかもしれません。おかげで、私のCDコレクションの1/4はバッハ、モーツァルト、シューベルト、シューマン、ブラームス、ヴォルフらの声楽曲です。

映画のあらすじは鮮明に覚えていませんが、ざっと書くと以下のようなものです。
ホセ・ファン・ダム演じる高名なバリトン歌手は、自分の病を察知し、ステージで引退を表明。隠遁生活をしていた時、二人の男女の若者に教師として歌を教えはじめる。厳しいレッスンで、二人は実力をつける。ある貴族が主催するコンクールに招かれ、二人はすばらしい歌声を披露する。そしてファン・ダムの弟子の青年と貴族の弟子が同じ仮面をつけて、どちらが歌がうまいか勝負する。勝負はファン・ダムの弟子の勝ち。しかしファン・ダム演じる歌の教師は、コンクールの会場に姿を現さず、自宅でコンクールが行われていた時間に亡くなっていた。

私の記憶が確かなら、“わたしはこの世に忘れられ”は、映画の中の歌の勝負で歌われていたような気がします。マーラーの交響曲で出てくる甘美なアダージョを彷彿とさせる哀しい透明感に満ちたメロディに、私はたいへん感銘を受けました。(最近、日本でも『のだめカンタービレ』『オケ老人』『マエストロ』といったクラシック音楽を題材にした映画がヒットしましたが、『仮面の中のアリア』はとても静かな映画で、様相がまったくちがいます。)

リッケルトの詩を読むと、どことなく悟りきった孤独感、寂寥感、厭世観といった東洋的ニュアンスが感じられます。後年、マーラーは交響曲「大地の歌」で李白らの中国の漢詩を用いた独唱付きの音楽としていますが、そういう嗜好の素地が、このころからあったような気がします。

とりあえず日曜日にどんな藤村実穂子がどんなパフォーマンスを聴かせてくれるのか楽しみです。せっかくなので、you_tubeにあったジャネット・ベーカーが歌っている“わたしはこの世に忘れられ”の動画を貼ります。指揮はジョン・バルビローリ、ニュー・フィルハーモニア管。冒頭のコールアングレとクラリネットのソロもいい。

https://www.youtube.com/watch?v=GeqiE8xisvs

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コメント
懐かしい映画です
こんにちは。
「仮面の中のアリア」懐かしいです。
私はレーザーディスクを持ってました。
いまアマゾンで検索するとDVDにはプrミアがついてますね。
ホセ・ファン・ダムの名演技、玄人俳優も顔負けでした。


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