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チョ・ソンジン| ピアノリサイタル@水戸

2018.01.28.Sun.10:00
■チョ・ソンジン| ピアノリサイタル
■2018年1月24日(水)@茨城県民文化センター
♪ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番ハ短調op.13「悲愴」
♪ベートーヴェン:ピアノソナタ第30番ホ長調op.109
【休 憩】
♪ドビュッシー:「映像」第1集
♪ショパン:ピアノソナタ第3番ロ短調op.58
【アンコール】
♪ショパン:スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31
♪リスト:パガニーニによる大練習曲S.141から第3番嬰ト短調「ラ・カンパネラ」

1/24の極寒の夜、水戸の茨城県民文化センターで韓国出身のチョ・ソンジンのピアノ・リサイタルを聴いてきました。彼の生演奏を聴くのは4度目です。それぞれのリサイタルにおける私の印象が少しずつ異なることがちょっとおもしろいw。

最初が2010年3月、佐川文庫@水戸。浜松ピアノコンクールでのソンジンの演奏を聴いた故中村紘子氏の推薦で実現した15歳のデビュー・リサイタル。その時の演奏に私は驚愕。特に「熱情ソナタ」は荒削りながら、高揚感に満ちた感動的な演奏で、真面目に研鑽を積んだら、将来すばらしい音楽家になるにちがいないと確信しました。
二度目は2014年10月の浜離宮朝日ホールのリサイタル。著名なコンクールへ出場を目指していることが感じられる演奏。モーツァルトやシューベルトの曲を弾いても、表現のニュアンスの中にショパン臭が見え隠れしていました。
三度目は2015年のショパン・コンクール優勝直後の2016年2月、佐川文庫@水戸。ショパン・コンクール優勝の凱旋リサイタルとなりました。しかし私はあまり感動できなかった。音もキレイでミスが少ない演奏であったけれど、アスリート的な演奏で、本来の自分の音楽を見失っている印象を持ちました。
そして今回が四度目。やっとコンクール垢が取れてきて、ようやく音楽家としてリスタートできた印象を持ちました。作曲家の意図を彼自身の言葉で語ろうとする姿勢が感じられました。

前半はベートーヴェンの初期の8番と最晩年の30番。
8番。第一楽章のはじまりの打撃の和音、その直後のわずかな間が絶妙。楽譜にはない余白が音楽に成っていた。図と地を意識した弾き方がとてもおもしろい。その後、緊張感を保ったまま非常にゆったりとしたテンポで進行しながら、徐々に疾走をしはじめました。第三楽章は、疾走しながらも、「悲しみよ、さようなら」と言わんばかりの諧謔的な表現が見え隠れする洒脱な演奏。全体的にサラッと演奏されました。しかしそれは8番の終わりと30番のはじまりをうまくリンクさせるための意図だったのかなと思いました。当初、8番と30番を並べてられたことが「冒険」のように見えましたが、なるほど!いろいろ考えて弾いていたようです。この30番でも、音符と音符の「間」を意識した演奏。時間と空間は対義語であるけれど、時間芸術の音楽に、空間的なものが感じられると表現に奥行きのようなものが出るものです。また、8番の最終楽章と、30番の第一楽章の冒頭は、左右の手がまるで対話あるいは呼応しているかのような箇所がありますが、私は曲をまたいで対比的に弾く意図を感じました。私、ベートーヴェンの8番と30番と続けて弾くことに、ピアニストとしての意気が感じられ、頼もしく感じられました。20代前半の等身大のベートーヴェンの演奏としては、なかなか良いと思いました。15歳の「熱情ソナタ」を聴いて以来、私はソンジンが生来の「ベートーヴェン弾き」と思っています。

ベートーヴェンの30番の最終楽章の厳格な変奏曲の後、休憩はさんでフランスの香りがするドビュッシーの「映像」第1集」とショパンの第3ソナタ。
私は音で空間を描くようなドビュッシーの音楽が好きです。「映像」はミケランジェリの歴史的な名盤があります。ガラス細工のような繊細でキラキラした演奏。ソンジンはもともと透明感があるキレイな音色の持ち主なので、その特徴は出ていましたが、それ以上に、旋律ラインを太めの音でたっぷりと弾いていたのが斬新でビックリでした。これはクラウディオ・アラウの演奏と印象が同じもの。ベートーヴェン弾きのアラウが弾くドビュッシーっておもしろい…と思っていましたが、ソンジンにもアラウににた音楽的な感性があるのかなと感じました。ミケランジェリの演奏がパステルの色彩で輪郭が曖昧なモネ系とするなら、アラウは色彩的で輪郭がはっきりしたゴーギャンでしょうかw。
最後はショパンのソナタ第3番。ショパン・コンクールの覇者だけあって、よく弾き込んだ跡が感じられました。ショパンがあまり好きじゃない私でも、まあまあ受け容れられた演奏でした。歌い過ぎず、全体の構成を見据えた演奏。最終楽章は、若々しい高揚感で溢れていて、場内は熱狂の渦でした。

アンコールは2曲。ショパンのスケルツォ第2番とリストの「ラ・カンパネラ」。この2曲は8年前の佐川文庫におけるデビュー・リサイタルでも弾かれた曲。この思い出の曲を水戸でまた聴けたというのは感慨深いものがありました。

最後にソンジンの演奏を聴いて2つ言い残したことがあります。
①前半と後半のプログラムを入れ替えた方が、ソンジンの個性が出たと思います。「ショパンコンクールの覇者」という枕詞から脱し、いちばん弾きたいと感じられた音楽をメインにした方がよいと私は思っています。
① アノの音は、透明感があってキレイ。しかしやや硬質感がある。ピアノの鍵盤を叩いているという一印象があります。これは私の嗜好にすぎませんが、ロシア出身のピアニストに見られる「木の箱」を響かせる感じが出て来ると、もっといい。ロシア的な奏法を学ぶと、より表現のでるのではないかと思いました。
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