人生4度目のバレエ鑑賞|ベートーヴェン・ソナタ@新国立

2017.03.29.Wed.19:30
10日程前(3/19)、東京・新国立劇場で「ベートーヴェン・ソナタ」という創作バレエをみてきました。ちょっとバタバタしていてなかなか感想が書けませんでしたが、記憶が飛ぶ前になんとか書きたいと思います。この公演は、私にとって人生4回目のバレエ鑑賞です。サッカー観戦やクラシック音楽のコンサートは数えられないくらい行っていますが、滅多にバレエへ行かないので、回数だけはきちっと数えられますw。人生3回目のバレエは昨年末のプロコフィエフ作曲の「シンデレラ」でした。この公演の入場時にもらったチラシの中に、今回みた「ベートーヴェン・ソナタ」がありました。バレエ公演には消極的な私ですが、この公演には強い興味を持ちました。なぜならベートーヴェンの音楽は大好きで、かつ彼の音楽がバレエ化する姿がまったく想像できなかったからです。

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■新国立劇場バレエ団公演「ベートーヴェン・ソナタ」全2幕
■2017年3月19日・日曜14:00@新国立劇場中劇場
音楽:ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン
振付:中村恩恵
音楽監修:野澤美香
美術:瀬山葉子
照明:足立 恒
衣装:山田いずみ
舞台監督:森岡 肇

【キャスト】
ベートーヴェン|福岡雄大
カール|井澤 駿
ヨハンナ|本島美和
ジュリエッタ|米沢 唯
アントニエ|小野絢子
ルードヴィヒ|首藤康之


キャストをみると、「シンデレラ」公演に出演していた方が2人(福岡・小野)の名前がありました。配役名をみると、ベートーヴェンの生涯における重要人物の名前ばかりなので、公演を見る前から、内容がベートーヴェンの苦悩と悲恋であることがだいたい予想が付きます。注目すべきなのは、ベートーヴェン役とルードヴィッヒ役とあるので、ひとりの人間を2人のダンサーが演じるということでしょうか。そして私が最も注目したのは、ベートーヴェンのどんな楽曲が使われるかということです。当日、もらったプログラムにあったのは次の楽曲。

プロローグの時に、モーツァルト作曲の「レクイエム」(ピアノ版)
その後はすべて ベートーヴェンの音楽。(音楽はすべて録音が使われました。)
(第一幕)
ヴァイオリンソナタ第5番へ長調Op.24「春」より第1楽章
ピアノソナタ第14番嬰ハ短調Op.27-2 幻想曲風ソナタ「月光」より第1楽章
エグモント序曲Op.84
弦楽四重奏曲第9番ハ長調Op.59-3「ラズモフスキー第3番」より第2楽章
弦楽四重奏曲第7番へ長調Op.59-1「ラズモフスキー第1番」より第3楽章
ピアノソナタ第25番ト長調Op.79より第2楽章
(第二幕)
交響曲第7番イ長調Op.92より第2楽章
弦楽四重奏曲第15番イ短調Op.132より第5楽章
ピアノソナタ第31番変イ長調Op.110より第3楽章
交響曲第9番ニ短調Op.125より第4楽章
弦楽四重奏曲第15番イ短調Op.132より第3楽章

私は「ベートーヴェン・ソナタ」というタイトルから、ピアノ・ソナタのみが使われるものだと勘違いしていました。しかし楽曲リストをみて、ソナタは「ソナタ形式」のイメージであると考え直しました。ソナタ形式とは、提示部→展開部→再現部→終結部という音楽的な構成のこと。その音楽的な流れをベートーヴェンの生涯に当てはめながら創作されたものにちがいない。実際、公演内容もその通りになっていたような気がします。

【演出について】
この公演はコンテンポラリー系の創作バレエなので、ダンサーの個々の踊りだけでなく、振り付け・照明・美術・衣装など総合的に見る方がより楽しめるかなと思っていました。実際、私の席は中劇場の2回の中央だったため、上方から俯瞰するようにステージを見ることができました。とてもシンプルな舞台美術でした。しかしステージの使い方が前後半、対照的。前半は前方のステージを使っていました。背景には白い大きな布がヨットの帆のように三角状のスクリーンが掛けられていて、空いているところは後方のステージとつながっていています。このスクリーンがとても効果的に使われていました。それは「影」を見せる手法。スクリーンの前後から照明を当てて、実体ではなく影を踊らせる効果。非実体の影は拡大されるので、動きも劇的にみえます。一方で後半は、三角形状のスクリーンと取り去り、後方を含めてスクリーンは倍以上に広がりました。ステージは全体的に黒のトーン。無限遠方と最前線の距離感がとても長く感じられた。以下、これは私の想像ですが、ステージ最前線で椅子に座って苦悩や絶望を演技していたルードヴィヒ(首藤)は「今」、最後方で舞踏するベートーヴェンの関係者は「過去」の記憶という距離感だったのではないか…と。まさに時間と空間、光と影、白と黒という対立軸を設定した演出をねらったのでしょう。

【振り付けと出演者について】
もっとも印象に残ったルードヴィヒ役の首藤康之でした。ダンサーというよりも舞台俳優のようでした。台詞もあったし、存在感も際立っていた。踊るというよりも、椅子の座って最小限の動きの中でベートーヴェンの苦悩や葛藤を演じていました。しかしベートーヴェンの2面性を首藤と福岡雄大の2人で演じ分けるというのは、作品そのものをちょっと分かりにくくしている感じがしました。女性陣では、ヨハンナ役の本島美和が妖艶で大胆な踊りにビックリ。それとベートーヴェンの「不滅の恋人」と考えられているアントニエ・ブレンターノ役の小野絢子はシンデレラ役の時と同様、清楚で優雅な踊りでした。
全体的な振り付けの件。中村恩恵さんの振り付け、なかなかおもしろかった。私が2002年フランス外遊中にリヨンでみたイリ・キリアン演出のストラヴィンスキーの「詩篇交響曲」の公演と似た動きが多々あったような気がします。(気の所為?)たとえば、最小限のシャープな動きとアクセント感、身体の伸び縮みみたいなところ。私はどちらかというと古典系バレエよりもコンテンポラリー系の方が好きなので、人間の身体表現の可能性を追求する不思議な動きに魅了されました。

【音楽とダンスの調和】
ベートーヴェンの音楽は、短い音型をさまざまに展開、変奏していく作曲手法でてきていますが、意外にバレエのリズムや流れが合うのが面白かったですね。「スプリング・ソナタ」のような流麗なメロディは言うまでもないですが、ベト7第2楽章の葬送風のタータタ・タータタという単純なリズム、弦楽四重奏の歯切れがよいフレーズなど。この公演では音楽は録音が利用されていましたが、一部、ピアノや弦楽四重奏団をステージにおいて、ライブ演奏があったらよりライブな感じが出たと思いました。

【ツッコミどころ】
交響曲第7番イ長調Op.92の第2楽章は葬送行進曲的な音楽です。この時、男性ダンサーたちの衣装は、下半身が人骨を思わせるデザインになっていました。やり過ぎじゃないか…ちょっと笑う。音楽だけで、「死」のイメージは十分に伝わります。

【ホールの雰囲気】
チケットは完売でほぼ満席でした。周りはやはり圧倒的に女性が多かったです。大劇場よりも中劇場の方が、ステージと客席の一体感が感じられて、私は好きですね。

【最後に】
振り付けの工夫が感じられるコンテ系の公演なら、またバレエを見に行ってもよいと思いました。しかし入場時にもらったチラシのほとんどは古典系のものが多数。私の人生5回目のバレエ鑑賞はいつになるでしょう?
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