エリソ・ヴィルサラーゼのミニコンサートと公開レッスン@東京音大

2017.02.07.Tue.10:05
2/5は所用で上京しましたが、
いちばんの目的は、東京音大の客員教授エリソ・ヴィルサラーゼの
ミニコンサートと公開レッスンを聴くためでした。
プログラムは以下の通りです。

【第1部:ミニコンサート】
R.シューマン アラベスク ハ長調 作品18
R.シューマン 幻想小曲集 作品12
シューマン=リスト  献呈
F.リスト スペイン狂詩曲

アンコール:モーツァルト ロマンス 変イ長調  KV C 27.04 (Anh. 205)
(ピアノ)エリソ・ヴィルサラーゼ

【第2部:公開レッスン】
R.シューマン パピヨン 作品2
(受講生)鶴澤奏 東京音大4年生

私は東京音大に「聴きたいメール」を送ったら、
入場券を無料で送っていただきました。
会場はほぼ満席。

今回のプログラムは彼女が得意なシューマンが主になっていました。
3曲目のシューマンの歌曲「献呈」がリスト編曲になっていることで、
最後の「スペイン狂詩曲」へつながるブリッジになっていましたね。

演奏がはじまった瞬間、ああこれがロシアのピアノだ…と感じました。
鍵盤を叩いているのではなく、木の箱としてのピアノが鳴っている感じ。
バスはロシアの大地に暗さ、ソプラノは人の声のように響きます。
豊かで大きな音量に対して、ホールの隅々まで行き届くような弱音も美しい。
にも関わらず、力が全然、入っていない弾き方のように見えます。

それと彼女の演奏からは、
言葉のような音が響いてくるのが印象的です。
数年前に読んだピアニストの原田英代著『ロシア・ピアニズムの贈り物』の中に、
ハンガリーの名ピアニスト、アニー・フィッシャーが
スヴァトラフ・リヒテルのピアノ演奏を聞いて
「これは音楽の領域から生まれた演奏ではなく、哲学の領域から生まれた演奏だ」
と評した言葉が紹介されていましたが、
これは、そのまんまヴィルサラーゼにも当てはまりそうな気がしています。
彼女のシューマンは真にファンタジーに満ちていて、
精神的に問題を抱えている作曲者シューマンの叫びを音に置き換えているようでした。
特有の付点のリズムがなんともいえず心の揺れを助長していました。

そしてリストの難曲「スペイン狂詩曲」は圧巻でした。
というか難しい曲なのに、難しそうに弾いていないところがスゴイ。
帰宅して若きキーシンの動画を見てみたら、
彼も完璧に弾いていたけれどとても難しそうに鍵盤を叩いていました。
一方でヴィルサラーゼは軽く鍵盤に触れながら、
ピアノに魔法をかけているかのような弾き方でした。
どうしてあのような音が出てくるのかマジで不思議です。

ちなみに私の席からはヴィルサラーゼの指がよく見えました。
女性のわりには大きめの手でガッチリしていました。
それと小指が長いように見えました。

アンコールが弾かれはじめた時、
「この曲はモーツァルトかな?」とは思いましたが、実際、知らない曲でした。
とてもチャーミングで可愛らしい曲で気に入りました。
休憩中、ロビーには、モーツァルト作曲「ロマンス」とだけ書かれた紙が貼り出されていました。
私、気になって、帰宅してから調べてみたらanh.205という番号がついていて、
モーツァルトが作曲したかどうか疑われている作品のようです。
しかしヴィルサラーゼは、これがモーツァルトの曲だと確信を持って弾いているようでした。

you_tubeに彼女が35年ぐらい前に同じ曲を弾いている動画がありました。
音量が小さいので、残念ながらよく聴き取れませんが
基本的には昨日、聴いた演奏とニュアンスは同じように感じます。
びっくりしたのは、その動画の中の聴衆にスヴァトラフ・リヒテルがいたことです。
そういえば、2人はネイガウスの門下でしたね。

1時間のミニコンサートの後は公開レッスンです。
東京音大4年生の鶴澤奏さんが受講生でした。
彼女が弾いたシューマンの「パピヨン」からは、
かなり上手な学生さんのひとりであることはすぐに分かりましたが、
やはり鍵盤と叩いている感じでしたね。
ヴィルサラーゼのように木の箱を鳴らしている感じがない。
ピアノ教師としても有名なヴィルサラーゼは、
「シューマンの初期の作品だけど、らしさが十分に出ている曲。
繰り返しのフレーズが同質にならないように、
また音が有機的に受け継がれていることを意識して弾くように…。
あまりロマンティシズムに陥らないようにレガートも控えめに…。」と
と自演しながら、時間が超過しているにも関わらず、熱心に教えていました。

最近、私が聴きたいと思うピアニストは
ロシア系の方が多いかもしれませんね。
2月なヴィルサラーゼでしたが、
3月にはイリーナ・メジューエワのシューベルト・プログラムと
『ロシア・ピアニズムの贈り物』の著者・原田英代氏のピアノ・リサイタルを聴くために
上京します。かなり楽しみです。

https://www.youtube.com/watch?v=eyad3mCAOfM

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