人生3度目のバレエ鑑賞|シンデレラ@新国立劇場12/23

2016.12.26.Mon.12:10
12/23金曜は私用で上京しました。その主目的は、新国立劇場でバレエ「シンデレラ」を鑑賞するためです。その日の午前中、上野の西洋美術館で「クラーナハ展」を見ましたが、彼が描く蠱惑的で妖精のような婦人像がシンデレラと同期する一瞬がありました。ちょっとドキドキw。私にとってバレエはまったくご縁がない世界です。しかしちょっと訳アリで、バレエのことを知ることが急務になったためです。(その訳は訊かないでください。)

実は日本でバレエの実演を見るのははじめて。これまで外遊した時に2度みただけでした。最初は2001年、リヨンのオペラハウスでみたイリ・キリアン演出のコンテンポラリー・ダンス。建築家ジャン・ヌーベルがリノヴェーションしたオペラハウスが見たくてリヨンを訪れました。ストラヴィンスキーの「詩篇交響曲」などを使った演出は圧倒的なインパクトで、バレエというよりも人間の身体表現の可能性を追求しているアートという印象でした。だからバレエと見たという実感があまりなかったのです。2度めは2002年、モロッコ・スペインを外遊した帰り道、ウィーン国立歌劇場でみた「ジゼル」。本当はオペラが見たかったのですが、その日はあいにくバレエ公演でした。昼間、ウィーンの建築巡礼で疲れ切っていて、公演の半分は寝ていました。帰国してから、主役を踊っていたのはマラーホフという有名な方だと知りました。この2回だけなので、ほとんどバレエ鑑賞経験に乏しい私…。
しかしバレエ音楽だけは昔からレコードやCDでよく聴いてきました。チャイコフスキー、プロコフィエフ、ストラヴィンスキーのバレエ音楽は大好きです。音だけで十分に満足してきたので、バレエそのものを見なくても満足な私でしたが、実際、「シンデレラ」を見て少し意識が変わりました。

12月と言えば「くるみ割り人形」のバレエ公演が「第九」のような年中行事化しています。しかし個人的な音楽の嗜好から、たまたま新国立劇場で上演されていたプロコフィエフの「シンデレラ」を見たいと思いました。バレエを見ると決めた日が遅かったため、私が上京できる12/23のチケットはほぼ完売状態だったのですが、「オケピ」というサイトで知り合った滋賀県の方に、新国の会員価格で譲っていただけました。そのチケはなんと前から2列めの中央の良席。幸運でした。出演者の踊りや表情などディテールがよく見えました。

前置きがたいへん長くなりましたね。
というのも、バレエをみた感想をどう書いたらよいのか…苦慮している証拠ですw

■新国立劇場バレエ団公演「シンデレラ」全3幕
■2016年12月23日金曜18:00@新国立劇場オペラパレス
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
振付:フレデリック・アシュトン
監修・演出:ウェンディ・エリス・サムス、マリン・ソワーズ
美術:デヴィッド・ウォーカー
照明:沢田 祐二
指揮:マーティン・イェーツ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

【キャスト】
シンデレラ:小野絢子
王子:福岡雄大
義理の姉たち:小口邦明、宝満直也
仙女:木村優里
春の精:五月女 遥
夏の精:飯野萌子
秋の精:池田理沙子
冬の精:細田千晶
父親:輪島拓也
道化:福田圭吾


ペロー原作の「シンデレラ」という物語は誰もがよく知っている内容なので説明する必要がないでしょう。バレエに造詣が深い親切なお友達がKバレエと英国バーミンガム・ロイヤルバレエのDVDを貸してくれたので、予め予習もできました。

【バレエについて】
はっきり言って、バレエの技術的なことはよく分かりませんが、印象に残ったことを記します。シンデレラ役の小野絢子はとても可憐さと伸びやかさが感じられました。肘から先の手の表現が繊細でビックリ。それがメイド姿のシンデレラの慎ましさによく出ていました。演技の部分もお上手でした。言葉なしで感情を使えるのは身体と表情だけですからね。箒を男性に見立てて踊るシーンはなかなかステキでした。第2幕のドレスアップした麗人の姿よりも、第1幕のメイド姿の方が可愛らしかったです。
それと仙人役の木村優里は気品があり存在感もありました。仙人というよりも妖精のよう。主役以上の見映えだった瞬間もありました。動きが滑らかで優美。
義理の姉を演じたのは女装した男性ダンサーでした。付け鼻とメイクが英国の大女優マギー・スミスのように見えました。コミカルで笑いをさそう踊りと演技も英国流?
道化役の方も存在感があって、いい味を出していました。
王子役の福岡雄大はさすがにカッコイイですね。第2幕で音楽がないタイミングでジャンプをしたのでフライング?と思って息をのみましたが、その後に音楽が付いてきて安心しました。
コールドの方々が数分踊った後、後方で控えているシーンがところどころにありましたが、みなさん肩で息をしていたので、バレエって過酷なものだということもよく分かりました。

【演出について】
演出や舞台、照明は「対比」を強調したものだったと思います。明と暗、静と動、庶民と王家、素朴と虚飾、夢と現実、大と小などなど。それと「変身」。シンデレラは言うまでもありません。老婆が仙人に…。舞台上でドレスアップをする意地悪姉さんたち。差異を見せると、より内容が分かりやすいですからね。これって弁証的とも言えるのでしょうか?
演出上のサプライズは、義理の意地悪姉さんに男性ダンサーが起用されたこと。でもコミカルで笑いを誘う演出だったので、憎めない存在という位置づけが成功していたと思います。小柄なシンデレラに対して大柄な姉さんがとても対比的。お姉系だからこそ、シンデレラへのいじめがあまり陰湿に見えず、逆にシンデレラの可憐さを引き立てていました。王子に対しての道化もそれに相応したはたらき。全体的には主役をもり立てる脇役がいい仕事をしていました。

【音楽・演奏について】
指揮や東フィルの演奏は無難でした。それほど問題がなかったと思います。全体的に木管の音色がいいアクセントになっていました。プロコフィエフのメタリックな音色と甘美なメロディを楽しめました。バレエの内容よりも、音楽の方がずっとモダンに感じました。バレエの踊りそのものはクラシックな振り付けだったので、コンテンポラリーと融合したところがあったらもっと奥行きが出るのではないかと思いました。それとCDなどで聴くシンデレラには「三つのオレンジへの恋」のマーチが引用されているところがずっと疑問でしたが、公演を見てやっとガッテンしました。それとこのバレエは、ワーグナーのようなライトモチーフ的なところが効果的に使われていたことが、実演をみてはじめて分かりました。

【ツッコミどころ】
シンデレラの最大の見せ所は、夜中の12時に麗人からメイドに変身するところです。ある意味で引田天功のような脱出シーン。麗人のシンデレラが、メイド姿をした別の人とすり替わって城を去るところが、客席から見え見えでした。もうすこし上手にやってほしかったですね。それとお城の舞台美術がちょっと安っぽく見えました。

【ホールの雰囲気】
新国立劇場へ来たのは、昨年の歌劇「さまよえるオランダ人」以来です。ワーグナーの作品の時は男性客が多かったのですが、バレエ公演となると圧倒的に女性が多い。子どもからお婆さんまで。いつもとちがうホールの雰囲気でした。

【まとめ】
3回目のバレエ鑑賞で、やっと「ちゃんと見た!」という実感があります。バレエ音楽をより楽しむためには、バレエの様子を思い浮かべながら聴くとより楽しめることが分かりました。次はいつバレエを見るか分かりませんが、その時も今回のように楽しめたらいいですね。

ホワイエに飾られていたシンデレラの衣装
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1987年に英国コヴェントガーデンで「シンデレラ」が初演された時のポスター
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