ヤルヴィ指揮のN響90周年特別演奏会|マーラーの「一千人の交響曲」

2016.09.09.Fri.17:42
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昨日、9/8は私用で上京しました。目的は3つ。
①午前中は都美術館でポンピドゥー傑作展、
②午後は浜離宮朝日ホールで話題のピアニスト反田恭平氏のピアノ・リサイタル
③夜はNHKホールでマーラーの交響曲第8番「一千人の交響曲」特別演奏会

今日は③のことを記します。
この演奏会は、NHK交響楽団創立90周年を記念した演奏会です。
演目は、演奏規模が大きく、滅多に演奏されない
マーラーの交響曲第8番変ホ長調一千人の交響曲」でした。
マーラーが完成させた10曲の交響曲の中で、この8番だけはなぜか縁がなくて
実演を聴く機会がありませんでした。
私が高2のころ、小澤征爾&ボストン響のレコードをお小遣いで買って以来、
およそ35年越しでマラ8をライブで聴くことができました。

指揮はパーヴォ・ヤルヴィ。
昨秋、彼がN響の常任指揮者就任記念演奏会で指揮したのは
マーラーの交響曲第2番「復活」でした。
私、それを聴きに行き、非常に感銘を受けました。
巨大で音響も悪いNHKホールそのものを楽器化したかのような立体的・空間的な演奏、
音楽そのものが筋肉質で引き締まった演奏でした。すばらしかった。
だからヤルヴィが振るマラ8も期待してしまうのが自然ですよね。
チケットが完売というのも自然な現象です。

で、聴いてみた印象は、全体的には佳演であったと思いますが、
昨秋のマラ2「復活」のようなビックリ感はなく、想定内のものでした。
マラ2「復活」が筋肉質とするなら、マラ8「千人」は均整がとれた演奏。
よく言うと平和で楽園的な演奏であり、
悪くいうとハートと貫くようなインパクトがない演奏でした。
演奏時間は80分程度で、一般的な演奏よりもはやい。
ステージ上にはオーケストラ団員、合唱団あわせて450人ぐらいいたでしょうか。
ハープが4台とはビックリでした。
これだけの規模で演奏を聴くのはもちろん初めてです。
それなりの音楽体験としては貴重なものでした。
金管のバンダの配置、合唱を座らせて歌わせる一瞬、ホルンや木管のベルアップ、
聖母役のソプラノ歌手を客席にせり出した高い位置から歌わせるなど
ふつうの交響曲の演奏の枠組みを超えた演出はマラ2とほぼ同じ。

個人的な好みで言うなら、
マゼール盤(ウィーンpo)の遅めのテンポで
雪融けの湧き水のような雑味やミネラル感がある演奏が好きです。
昨夜のヤルヴィは全体的には純水のようなイメージです。

これはあくまで私の私見ですが、
パーヴォ・ヤルヴィはこのマラ8そのものに
あまり共感できるものがなかったので、
このような演奏になったのではないかと感じています。

この曲は楽章形式でなく、第1部・第2部という構成。
第1部は、新約聖書にもとづく賛歌「来たれ、創造主である精霊よ」
第2部は、ゲーテの「ファウスト」による終演の場

第2部の内容は世俗的なシーンであるけれど、
実際には女性を讃えた内容になっています。
“永遠に女性的なものが私たちを引き上げる”というような歌詞が続いています。
しかもこの曲そのものの献呈が
マーラーの妻のアルマになっています。
たしか当時、マーラーは若くて美しい妻アルマが
建築家グロピウスとの浮気に悩んでいた時期のはず。

この曲にはゲーテの「ファウスト」で最も重要で有名な台詞である
“時間よ止まれ、君は美しい”という言葉は一切でてきません。
物語では、この言葉を発した瞬間、
ファウスト自身が死んでしまう物語になっています。
マーラーも死をひどく恐れていましたよね。
だから声楽ソリストや合唱にはこの歌詞を歌わせなかった。
マーラーは“時間よ止まれ、君は美しい”というアルマへの想いを
音の響きそのもので告白したかったのではないかと私は考えています。

祝祭的、メモリアルな演奏会では
たしかにこのマラ8はふさわしいけれど、
ヤルヴィはこの曲が持つマーラーの私的、個人的な部分に
共感できなかったのではないかと思います。
だからこのような純水のような演奏になったのではないかと…。

実際に私でさえ、マーラーの交響曲で好きなのは8番ではなく、
2番、3番、6番、9番のような
マーラー自身の病的な部分が色濃く出ている作品ですからねw。

80年代後半、私はN響の学生会員でしたが、
このころはサヴァリッシュ、シュタイン、スウィートナー、マタチッチらが
すばらしい音楽をきかせてくれていました。
20年におよんだ空白あるいは暗黒期間を経て、
昨年、常任指揮者に就任したパーヴォ・ヤルヴィは
N]響をベツモノにしようとしている感じがします。
創立100年まで、あと10年。
N響がどう変わっていくか楽しみでもあります。

■N響90周年記念特別演奏会|マーラー「一千人の交響曲」
■2016年9月8日(木)7:00pm @NHKホール
■マーラー/交響曲第8番 変ホ長調「一千人の交響曲」
ソプラノ:エリン・ウォール、アンジェラ・ミード、クラウディア・ボイル
アルト:カタリーナ・ダライマン、アンネリー・ペーボ
テノール:ミヒャエル・シャーデ
バリトン:ミヒャエル・ナジ
バス:アイン・アンガー
合唱:新国立劇場合唱団、栗友会合唱団
児童合唱:NHK東京児童合唱団
管弦楽:NHK交響楽団
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ

この写真は終演後のものです。
ガラケーでこっそり撮ってしまった。

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