国立西洋美術館とミケランジェロの建築展の雑感

2016.07.24.Sun.11:08
ここ数年、建築の話題が報道でよく取り上げられるようになりました。
建築関係者の私としては、
建築の世間で注目されることは悪いことではないと思っています。

昨年は東京五輪の新国立競技場の高額な建設費が問題になり
当初のザハ案が破棄され、再コンペによって隈案に変更されました。

そして、先日、東京・上野の国立西洋美術館が世界遺産になりました。
世の中の人が建築家ル・コルビュジエの名前を知るだけでも意義はあります。
彼の作品や思想には私も影響を受けました。
近代建築の5原則やモジュロールの考え方は自分の仕事に身についています。
欧州やインドの彼の作品も行脚しました。
ただ世界遺産に選ばれたル・コルビュジエの17の作品の中で
西洋美術館そのものに関しては、「?」という気持ちは正直、まだ残っています。
その理由は以下の通りです。

①敷地を見るなどのために1度しか来日していないル・コルビュジエは、
スケッチや基本設計の後、日本人の弟子に実施設計や現場を任せてしまい、
極論すると、構想だけして他人が完成させた建築とも言えてしまうこと。

②当初の構想にあった展示室を螺旋状に増築していく
「無限に成長する美術館」の概念とは異なった増築がされてしまった。
竣工した姿を再来日して見に来ていない皮肉屋のル・コルビュジエが、
今の在りようをみたら「これは誰の設計ですか?」と言いそうw。

③ディテールの様相がかなり日本的に洗練されてしまっていて
ル・コルビュジエ特有の荒々しい素材感や大胆なディテールが見られない。
これは外遊で実際に見た彼の作品との比較で感じたこと。

でもまあ、建築に興味を持つ人が
これを契機に増えただけでもよい
と思うことにしようと思いますw。


先日、東京出張時に自分のための自由時間を1時間半捻出して
パナソニック汐留ミュージアムで
「ミケランジェロ展|ルネサンス建築の至宝」を見てきました。
建築に特化したミケランジェロの展覧会はおそらく日本初だと思います。
展示は4つの部門から構成されていました。
・芸術家としてのミケランジェロのデッサンや彫刻などの展示
・システィナ礼拝堂に特化した展示
・建築家としてのミケランジェロの作品(写真・図面・模型等)の展示
・ミケランジェロに影響を受けた日本人建築家の展示

私、イタリアへは2度の外遊をしました。
ミケランジェロの代表的な建築、彫刻、壁画、絵画等は
ローマやフィレンツェなどでほとんど見たつもりです。
だからこの展覧会は、とりあえず復習のつもりで行きました。

建築の展示に関しては、そこそこ知っているものばかりなので
模型や映像などを見ながら、実作を思い出すのは楽しかったです。

おっ!と思ったのは、建築じゃなくて彫刻の方でした。
ベルギーの教会にある「ブリュージュの聖母」が展示されていたこと。
これが展示されているとは知らなかった。

残念ながら複製彫刻ではあるけれど、
実作とほぼ同等のものと考えてよさそうです。
ただ、世界の至宝と行ってよい
ピエタ像やモーゼ像、ダヴィデ像などに比べてしまうと
ちょっともの足りない感じがしました。

なぜ私が「おっ!」と思ったかというと
昨年みた映画『ミケランジェロ・プロジェクト』の題名にあるミケランジェロとは
「ブリュージュの聖母」のことを表現していたからです。
ミケランジェロの「ブリュージュの聖母」などをナチから取り返すプロジェクト
と言い換えることができます。

その映画の内容は、
第二次大戦中にナチが強奪した「ブリュージュの聖母」をはじめとする美術品を
連合軍側の美術の専門家たちのチームが奪還するという内容でした。
戦争映画の外伝的なもので、戦闘シーンはほとんどない異色作。
この展覧会で、いままで見たことがなかった「ブリュージュの聖母」を
複製であっても、どんな感じのものなのかを知り得ただけでも成果でした。

この彫刻の側にいたスタッフに
「この彫刻は、昨年公開されたミケランジェロ・プロジェクトという映画の
代名詞になったものですよね?」と訊ねたら、
「その映画、見ていません」という答えでちょっとガッカリw。

ル・コルビュジエの弟子が完成された西洋美術館の
世界遺産登録に違和感を覚える一方で、
ミケランジェロの複製をみてそれなりに満足する私、
ものの見方にブレがあるのかなぁと思ったりしてみたw。

miche01.jpg

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