「継承」を感じさせるペーター・レーゼルのピアノ

2016.05.13.Fri.09:15
一昨日の東京出張が決まったのが数週間前でした。
夜、よい音楽会があれば行こうかな!と検索してみたところ、
・サイモン・ラトル指揮ベルリンpoのベートーヴェン・チクルス初日@サントリー、
・小澤征爾指揮&新日本フィルの特別演奏会@すみだ などなど
さすが東京は演奏会が多彩ですごいと思いましたが、
私は上の演奏会、全然、興味が湧きませんでした。
牙を失ったラトル、興行師的になってしまった小澤、
というのが私の評価です。
(チケットはおそらく完売だったことでしょうけど)

私が「これだ!」と思ったのが
紀尾井ホールで行われるペーター・レーゼルの
やや地味めのピアノ・リサイタルです。
バッハとモーツァルトが演目でした。
レーゼルは、私のクラ・ミクのみなさんが絶賛している
旧東ドイツ出身の71歳のピアニスト。
彼のリサイタルと出張が重なったのは天の配剤でしょうか。

レーゼルが組んだプログラムをみて
私は彼のねらいを考えながら
前日、手持ちのCDのを聴きながら予習をしました。

・イタリア協奏曲には主題労作的なところがある。
・モーツァルトのハ短調の作品はベートーヴェンの雰囲気がある。

と考え、レーゼルはドイツ音楽の縦系の歴史をふまえ
バッハやモーツァルトら先人の曲から
ベートーヴェンを透かしてみせるプログラムをつくったのか?
と考えたりしていました。

そして当日の演奏会に臨みました。
客席は8割ぐらい埋まっていたと思います。
客層をみると、レーゼルがなんたるかを知っているような感じの方ばかり。
なんとなくよい演奏会になりそうな予感。
私が考えるよい演奏会は、
①演奏の内容、②よき聴衆、③ホールのホスピタリティがそろって
はじめて成り立つと考えているからです。
もっとも問題がなるのが②なのです。

レーゼルの演奏は、とても素晴らしかったです。
とても明晰な音楽性、粒が揃ったキレイな音。
吉田秀和氏はミケランジェリの音を「キラキラ感」と評しましたが、
私はレーゼルの音を「果樹園にいるような芳香」を感じました。
それはタッチが瑞々しく、音に濁りがない弾き方だったからでしょうか?
理由はよく分かりません。

私が予習して想定していた「ベートーヴェンへの継承」」的な内容も
ふまえられた演奏だったように思えました。
それに加え、前半最後のパルティータ第4番の終曲のフーガ風のパッセージが
後半の冒頭のK576の小さなファンファーレの後の対位的なパッセージが
見事にリンクした効果を醸しだしていて、
バッハとモーツァルトの関係性も再確認させてもらった気分でした。

それとハ短調どうしのモーツァルトの幻想曲K475とソナタK457は
つづけて演奏されました。本来、一緒に演奏されるのが自然ですが
単独で幻想曲とソナタが別々に演奏されることもあります。
私、これらが一緒に弾かれることが自然だと考えています。
レーゼルの演奏は、4楽章形式大ソナタのように感れられ、
まさにベートーヴェンのソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」のようなスケール感。
このことも私にとっては再発見でした。

最近、読んだ本の中にあった
ゲーテがシェイクスピアのことを評した一文を
ちょっと思い出したりしていましたよ。

銀の皿に金の林檎をのせて、
われわれにさし出してくれる

私たちがなんとか銀の皿まの予習や用意はできるが、
その以上の豊かなものをシェースクピアの文学は持っていて、
なかなかそこを超えられないことを語っている一文。
すばらしい演奏会へ行くと、このような思いを持つことが多いですね。
1月に水戸で聴いたクルスティアン・ツィメルマンの時もそうだったし、
今回の東京で聴いたペーター・レーゼルもそうでした。
年に数回、こういう演奏会へ行けるといいですよね。

聴衆の集中力も高い演奏会でした。
私が聴いた席は、ステージ直上の2階バルコニー席の鍵盤側。
演奏者を見下ろすような席でしたが、抜群に響きが良かったです。
この席のことを紀尾井ホールへよく行かれるマイミクさんたちが
とてもよいと書いていたことを覚えていました。
試してみたら、ビックリぽんでした。
いつかこの席で紀尾井シンフォニエッタを聴きたいです。

演奏会後、知人のGRFさんと四ツ谷のピッツェリアで感想会。
モーツァルトのハ短調の曲をつまみにして、
GRFさんの「テンペストや月光ソナタのニュアンス」と
私の「ベートーヴェンの3番のピアノ協奏曲の雰囲気」という聴き方のちがいが
とてもおもしろかったですね。

はじめにバッハやモーツァルトがいて、
必然的にベートーヴェンがいたことを
思い知ることができた夜でした。
たしか「三国志」に

死せる孔明、
生ける仲達を走らす

とありましたよね。
ベートーヴェンは先人から
多くを学んだのだと思います。
私、ライブでギーゼキングやハスキルやグルダやヘブラーが弾く
モーツアルトを聴くことは叶いませんでしたが、
レーゼルが弾くモーツァルトが聴けてよかったと思いました。



■ペーター・レーゼルのバッハ、そしてモーツァルト <ピアノリサイタル>
■2016年5月11日(水)19時~ @紀尾井ホール
■ 出演者: ペーター・レーゼル(ピアノ)

♪J.S.バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971
♪J.S.バッハ:パルティータ ニ長調 BWV828

♪モーツァルト:ソナタ ニ長調 KV576
♪モーツァルト:幻想曲 ハ短調 KV475
♪モーツァルト:ソナタ ハ短調 KV457

(アンコール)
♪J.S.バッハ:フランス組曲のガボット(だと思うw)
♪J.S.バッハ:主よ人の望みの喜びを
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コメント
音楽が人を呼ぶ
今日は♪
それはエビネンコさんがレーゼル氏の音楽に呼ばれたのだと思います♪

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