水戸室内管#95定期(1/2)~気が利いた音楽葬のような前半

2016.03.29.Tue.12:26
先週の金曜の夜、1年半ぶりに水戸室内管弦楽団の定期演奏会を聴いてきました。チケット争奪戦にも参加せず、聴く予定がありませんでした。しかしマイミクFさんから「相方が都合が悪くなってしまったのでチケットが1枚あります。一緒に聴きませんか?」というメッセージが舞い込み、思案しましたが、小澤征爾氏が振る「運命交響曲」をライブではまだ聴いたことがなかったので、その提案に「行きます!」とお返事をしました。演奏後の速感は当日中につぶやきましたが、感想をまとめたいと思います。

会場はほぼ満席。チケットは完売だったそうです。茨城県内は地デジでライブ放送がありました。いちおう録画しておきました。後日、NHK|Eテレで放送されるでしょう。

演奏会のはじめ、一瞬、照明が暗くなり団員たちが入場。2月末にお亡くなりになった団員でティンパニ奏者のローランド・アルトマン氏への献奏です。拍手はしないでほしいという言葉の後、小澤征爾指揮でモーツァルト作曲ディヴェルティメントK136第2楽章が演奏されました。アンダンテのはずなのに、それよりもさらに遅いアダージョ気味のテンポでした。止まりそうなくらいゆっくりとした演奏の中にアルトマンの死を悼む気持ちをみました。弦の音は美しいだけでなく、すすり泣いているようにも聴こえました。胸が熱くなりました。天国で名ティンパニー奏者もきっと喜んでいることでしょう。私が水戸室内管の定期で献奏を聴いたのはこれで4度目。ロストロポーヴィッチ氏、吉田秀和氏、潮田益子氏らが亡くなった直近の定期の時でした。

プログラム1曲目のシベリウスの「悲しきワルツ」は指揮者なしで演奏。コンミスは竹澤恭子。この曲も通常よりも遅めのテンポ。しかしコンミスがそのテンポを体全体で表現するようにオケを統率していました。弦のタテ線・ヨコ線を見事に織り上げた演奏。

2曲目のモーツアルトのクラリネット協奏曲イ長調K622も指揮者なしで演奏。コンミスは渡辺實和子。この演奏はインテンポ相当。佳演でした。この曲はイ長調であるにも関わらず、とても哀しく聴こえる不思議な音楽です。神の領域の音楽なのかもしれません。
クラ独奏リカルド・モラレスはフィラデルフィア管主席奏者としても活躍中。澄み切った曲想の中に、クラの哀愁がある響きがすばらしい音楽です。モラレス氏のクラは低音がとてもよく鳴っていて、楽器も従来よりも少し長いようにみえました。私はバセット・クラリネット?かと思い、演奏後、ちかくにいたスタッフへ問い合わせをしたところ、「通常のものと形はすこし違うけれどクラリネットです。バセットではないです。」という返答。モラレスのクラの響きに、私はトーストの上で溶けるバターの香ばしい匂いを感じました。

献奏と第1部の演奏、全体を通して「透明な哀しみ」が通奏低音のように感じられるものになっていました。思いがけないローランド・アルトマン氏の訃報とプログラムの曲想が見事に合致したものになっていて、まさに気が利いた音楽葬のよう。神の計画としか思えない前半の演奏でした。

■水戸室内管弦楽団第95回定期演奏会
■2016年3月25日(金)19時@水戸芸術館

【献奏】故ローランド・アルトマン氏のために
♪モーツァルト:ディヴェルティメントK136から第2楽章(小澤征爾)

【第1部】
♪シベリウス:劇音楽≪クオレマ≫作品44より「悲しきワルツ」(指揮なし)
♪モーツァルト:クラリネット協奏曲 イ長調 K.622(指揮なし)
クラリネット独奏:リカルド・モラレス

【第2部】
♪ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 作品67(小澤征爾指揮)

■オーケストラ出演者(各パート五十音順)
ヴァイオリン:安芸晶子、植村太郎、荻原尚子、久保田 巧、佐份利恭子、塩田 脩、島田真千子、
        竹澤恭子、豊嶋泰嗣、中島慎子、中村静香、依田真宣、渡辺實和子
ヴィオラ:大島 亮、川本嘉子、店村眞積、千原正裕 
チェロ:北本秀樹、原田禎夫、堀 了介、宮田 大 
コントラバス:池松 宏、助川 龍
フルート:岩佐和弘、工藤重典 
ピッコロ:小池郁江
オーボエ:フィリップ・トーンドゥル、南方総子
クラリネット:リカルド・モラレス、中 秀仁
ファゴット:ダーグ・イェンセン、依田晃宣
コントラファゴット:鹿野智子
ホルン:猶井正幸、ラデク・バボラーク 
トランペット:デイヴィッド・ヘルツォーク、杉木淳一朗
トロンボーン:呉 信一、新田幹男、野々下興一
ティンパニ:竹島悟史

(つづく)

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