正月にみた重い映画「アメリカン・スナイパー」

2016.01.04.Mon.23:08
昨年2月末、劇場公開された
映画「「アメリカン・スナイパー」(2014年)を
私、年度末のバタバタで映画館へ見に行けませんでした。
昨夜(1/3)、やっとレンタルDVDで見ました。

華やかな「NHKニューイヤーオペラコンサート」の後に見たので
その落差の大きさと重い主題に打ちのめされました。
これは戦争映画でありながら、反戦の意識に満ちていました。

この映画の主人公は、イラク戦争に出征したアメリカ海軍の
特殊部隊ネイビーシールズの隊員クリス・カイル。

スナイパーである彼は、「誰一人残さない」という
人並み外れた狙撃の精度からレジェンドと称される。
故郷に残した家族を思いながら、スコープをのぞき、
引き金を引き、敵の命を奪っていくクリス。
911同時多発テロの後、
4回にわたってイラクに送られた彼は
心に深い傷を負ってしまう。
そして悲劇的な結末。

クリスを演じるのは俳優ブラッドリー・クーパー。
監督はクリント・イーストウッド
この映画のキャッチ・コピーは
「米軍史上最多、160人を射殺した、ひとりの優しい父親」

この映画では、
対戦車手榴弾を携え自爆テロをしようとする
イラク人の母子をカイルが射殺するなど
残虐なシーンがたくさん出てきます。
昨年、世界に衝撃を与えた「IS」の蛮行を思わせる
殺略シーンもありました。

しかし、いちばんの見所は
壮絶な戦闘シーンではなく登場人物の心理描写です。
戦うアメリカとイラク、帰還した兵士と家族という
2つの軸が輻輳するような展開が緻密に出来ていて、
この映画は人間の心理ドラマであることが痛感できます。
イラク側の困窮な状況などもしっかりと描かれていました。
両国の兵士にも家族がいる。
家族を守ることは国を守ること。だから戦う。
仲間がやられたらやり返す。復讐が続く。
勝っても負けても、どちらも深く傷つく。
負の連鎖のフーガがまさにこの映画です。

戦場では英雄であっても、母国に戻ってからは
生死をかけて戦ったの極限状態から解放されたクリスは
アメリカに戻っても、戦争の心的後遺症で苦しみます。
血圧は異常に高く、いつも緊張状態。
運転中にミラーに映る車に落ち着かない。
子どもとじゃれ合う犬を殴り殺そうとする。
普通の生活が送れない。
異常行為が目立つようになっていました。
痛々しかったです。

私、この映画を見ながら
ベトナム戦争から帰ってきた帰還兵の心的外傷を描いた
「7月4日に生まれて」「プラトーン」「地獄の黙示録」「タクシードライバー」
「ディア・ハンター」「ランボー」などを思い出しました。
戦争では勝者はいないと強く思います。

エンドロールも印象的でした。
なぜならシーンだけが進み、音が無かったからです。
死者への鎮魂と祈り、戦争への怒りなどが
沈黙のスクリーンから感じられます。
とても重たい余韻でした。

映画の冒頭で、クリスの父親が
「世界には無力な羊と、羊を襲う狼と、羊を守る番犬がいる。お前は何になる?」
と息子に訊くシーンがありました。
アメリカやスパイナーのクリスはまさに番犬です。
日本は戦後、ずっと羊でしたが、
昨年の安保法案可決によって番犬にもなれるようになりました。
2015年は「戦前」の元年になるかもしれませんね。

この映画は、戦闘シーンはかなり刺激的ですが、
出演者の心理描写には過剰演出はありません。
むしろ淡々としていて、その余白を埋めるのは
その映画を見ている人という作り方になっています。
画面の色彩トーンは、
砂塵の白っぽさと闇の黒っぽさが残像として残っています。
これは出演者の心理と同調していると言えます。

今、世界の映画好きは、
新作の「スター・ウォーズ」を楽しんでいるようですが、
私はそれに反して、重厚な映画をみてしまい、
心的切り傷を負ってしまった感じですw。



余談ですが、Mixiの映画レビューで
以下のような、とてもおもしろいことを書いている人がいました。
かなり映画を見ている方のようです。

たったひとりで160人を殺すのが『アメリカン・スナイパー』
たったひとりを8人で救うのが『プライベート・ライアン』
たったひとりの少女と戦うのが『フルメタル・ジャケット』
たったひとりも常人がいないのが『地獄の黙示録』


https://www.youtube.com/watch?v=Av1UW0myxiA


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