久々の年末の第九(バッティストーニ&東京フィル)

2015.12.29.Tue.09:30
2015121915450000daiku.jpg


12/19に東京で第九を聴いてきました。
実は年末恒例化した「第九」の演奏会が
あまり好きじゃありません。
年末第九にしか来ないようなチャラ系の入場者が散見され
気分が悪いからです。
だから年末に自宅でCDで聴くことはあっても、
コンサートホールに足を運んで
第九を聴くことは20年ぶりぐらいです。
なぜ、この東フィルの第九に興味を持ったのか?
理由は2つあります。

①アンドレア・バッティストーニが指揮するから。
②レオノーレ第3番と第九のプログラミングに
 ピン!とくるものがあったから。

バッティストーニが東フィルの定期演奏会で、
プッチーニの歌劇『トゥーランドット』を
演奏会形式で指揮してたいへんに評判になっていました。
とても気になる指揮者でした。

また音楽評論家の故吉田秀和氏がレオノーレ第3番を評して
ベートーヴェンの本質がよく表れている音楽だと
FM「名曲のたのしみ」で語っていたことがとても印象的でした。
外から枠をもって押さえつけようとするものに対して
気迫をもって立ち向かい、抵抗しそれを打ち破って
勝利の凱歌をあげ、人間を解放させる音楽
と語られていたように記憶しています。
この考え方は、第九にもよく当てはまるような気がして、
私はバッティストーニはこの2曲をどう指揮するのか
とても聴いてみたくなりました。

東フィルの第九の初日は
私が聴く前日の12/18@オペラシティ。
ツイッターでは「1時間を切るはやい演奏だった」
という感想が
多数見受けられました。
一般的に第九の演奏時間は70分前後なので
物理的な時間だけみれば確かに早いかもしれませんが
私はそれほど気になりませんでした。

私が持っているCDで比較的はやめの第九を挙げると
ルネ・レイボヴィッツ&ロイヤル・フィルの62分。
ジョン・エリオット・ガーディナー&O.R.Rの59分。
リッカルド・シャイー&ライプチヒ・ゲヴァントハウスの62分。

特にレイボヴィッツの第九は、半世紀以上のものですが、
ベートーヴェンのメトロノーム記号を守ったテンポで
演奏したものと言われています。
だから62分前後の演奏が、
いわゆる「楽譜とおり」と私は思っているので、
ツイッターの投稿で、バッティストーニもこれに準じた演奏らしい
という予備知識を携えてサントリーホールへ向かいました。
会場は、ほぼ満席。

最初のレオノーレ第3番は
吉田氏の言葉通り、気迫に満ちた演奏でしたが、
もうひとつ思ったのは旋律のフレージングが
「言葉」のように聴こえ、
明らかに「フィデリオ」を意識した演奏のように思えました。
それを決定づけたのは、
曲の終盤の「フィデリオ」の大臣の到着を告げる
トランペットのファンファーレが演奏されるところです。
最初のファンファーレがステージ裏から聴こえてきました。
二回目は、ステージ裏のより近く場所から聴こえてきました。
大臣の隊列が近づいてきた時間差を演奏する位置を変えて
演奏されたという一種の演出でした。
劇的で高揚感に満ちた演奏でした。

休憩をはさんで、次は第九です。
確かに一般的な演奏に比べれたら
はやめの演奏でしたが、
前述したように、それほど気にはなりません。
ちなみに私の計測では、各楽章順に
10分→15分→12分→22分。
計59分の第九でした。

東フィルのメンバーたちは、バッティストーニのテンポに
よく食らいついて演奏していました。
尋常じゃないオーケストラの集中力と気迫、
ホールの観客にも伝染していったような感じでした。
私はただ早いというよりも、
コンパクトになった1~3楽章の圧縮感・凝縮感が
音楽をより濃く感じさせていたのではないかという演奏でした。
すべては第4楽章にベクトルが向いているかのよう。
第4楽章はまさにオペラ的に感じられました。
特に4人の独唱者の中で
テノールのアンドレアス・シャーガーが
他に際立って存在感を示していました。
彼が「フィデリオ」のフロレスタンのように見えてきたのは
私だけじゃないでしょうw。
合唱陣は大多数とは言えないけれど、
粒ぞろいのメンバーだったためか、
ひとりひとりの声が感じられるような歌声でした。
(合唱もコンパクトだけど凝縮感があると言えるかも。)

聞き手によっては、バッティストーニが作った第九に対し、
克明さや明晰さに欠けると言う方がいても
おかしくないと思いますが、
しかしそれを圧倒する劇的あるいは激的な推進力に
圧倒されて私は帰ってきました。
(頭を冷やすためにすこし間をあけて感想を記しました。)

演奏会から10日ほど経っていますが、バティストーニは、
レオノーレ第3番と第九をペアリングして
吉田秀和氏が語っていたような
ベーーヴェンの音楽の核心である
勝利の凱歌と人間の解放を
見事に歌いあげていたように思われます。

■東京フィル|第九特別演奏会
■2015年12月19日(土)14時~@サントリーホール

指揮:アンドレア・バッティストーニ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
ソプラノ:安井 陽子*
アルト:竹本 節子*
テノール:アンドレアス・シャーガー*
バリトン:萩原 潤*
合唱:東京オペラシンガーズ*

ベートーヴェン/序曲『レオノーレ』第3番op.72a
ベートーヴェン/交響曲第9番『合唱付』op125*
スポンサーサイト
コメント

管理者にだけ表示を許可する