紀尾井シンフォニエッタ|第98回定期演奏会

2015.02.18.Wed.12:37
今年の8月に紀尾井シンフォニエッタ東京が
第100回目の定期演奏会を迎えることを記念して
昨年、「セレクト3」という定期演奏会5回のうち3回選べる
準定期会員的なチケットを売りだしてくれました。

定期会員はシーズン中すべてのチケットを買うのが原則ですが、
地方に住んでいる私にとって好きな回を3つ選んで行けることだけでなく、
先行して良い席を確保できること、若干お安く買えることは
たいへんにありがたいです。

ちなみに私は2014-15シーズンの中で以下の3つを選びました、
第98回。シトコヴェツキー編曲のゴールドベルク変奏曲弦楽合奏版が聴きたいから。
第99回。ヴァイオリン名教師アナ・チュマチェンコの独奏が聴きたいから。
第100回目。ビシュコフ指揮によるベト七とブラームスの二重協奏曲が聴きたいから。

ということで、
先週末、第98回目を聴いてきました。
演目等、詳細は以下の通りです。

■2015年2月14日(土)14時@紀尾井ホール
■紀尾井シンフォニエッタ東京第98回定期演奏会
指揮&ヴァイオリン:ドミトリー・シトコヴェツキー
コンサートマスター:千々岩英一
♪J.S.バッハ:ゴルドベルク変奏曲BWV.988(弦楽合奏版/シトコヴェツキー編曲)
♪チャイコフスキー:弦楽セレナードop.48
【アンコール】
♪J.S.バッハ:アリア~管弦楽組曲第3番BWV.1068

感想は次のような感じです。
①紀尾井シンフォニエッタは良い意味でも悪い意味でも優等生的。
②ゴルゴベルク変奏曲は、演奏がかなり難しかったようだ。
③弦セレはまあまあの響きでとりあえず満足 

①について

紀尾井シンフォニエッタ東京(以下、紀尾井)は、
私の地元にあるいちばん身近な水戸室内管弦楽団と同じ
室内オーケストラなので両者の響きなどをくらべてしまうのは自然なことです。
しかも今回のプログラムは、オール弦楽合奏ということなので、
オーケストラの芯の部分をじっくり聴くことができます。
この日の紀尾井のメンバーの中には、水戸室内管に客演したことがある
篠崎知美・河原泰則・井上静香ら各氏が参加していました。
全般的に、紀尾井のヴィオラやチェロの音に厚みや豊かさが感じられず、
ヴァイオリンの音を十分に支えきれていないので、響きがうすいと感じました。
紀尾井のメンバーも(!)名門音大出身あるいはコンクール入賞歴、名門楽団所属歴など
それなりのキャリアの持ち主によって構成されていますが、
実直で素直な響きの響きでしたが、やや優等生的です。
もう少し艶のようなものがあるといいと感じました。


②について

ゴルゴベルク変奏曲はピアニスト、グレン・グールドらの名演が有名ですが、
グールドの演奏に触発されたヴァイオリニスト・シトコヴェツキーが
84年に弦楽三重奏曲用に編曲し、
90年に弦楽合奏用に編曲しました。
私は編曲された両方のCDを持っています。
そしてバッハの音楽は、
演奏形態を変えてもすばらしいことが変わらない普遍性にいつも感動しています。
実演の機会が少ないのが難点でしょうか。
ちなみに弦楽合奏版では全30変奏曲を
全合奏、五重奏、四重奏、三重奏、二重奏という様々な形態で演奏されます。

演奏は
シトコヴェツキーがヴァイオリン独奏をしながらの指揮。
この編曲は、原曲の異なった音域を各弦楽器に受け持たせています。
つまりアンサンブルのまとまりがまさに肝です。
しかしアンサンブルの精度は全般的に不満でした。
演奏が難しかしい曲であるとは思いますが、
時折みられたアンサンブルのズレなどが気になりました。
私は超絶アンサンブルを期待していたのに…。

それと音楽する愉しみが感じられず、
小さくまとまってしまった演奏でした。
室内楽的な箇所が多く、
全奏に参加するまでの「休み時間」が多いので
多くの非ソリストたちにとって
緊張感を持続するのは難しかったようです。

それと特にデュオやトリオに参加したヴィオラとチェロの
若いトップ奏者は明らかに役不足でした。
演奏が難しいのか、練習不足なのは、事情はよく分かりせんが…。
他に彼らよりうまく経験もある適任者がメンバーにいたと思います。
どうして彼らがトップじゃなかったのか疑問でした。
ベストの編成で望んで欲しかったです。

個人的におもしろいと思ったこともありました。
ピアノで聞き慣れたゴールドベルク変奏曲を
弦楽合奏版をライブで聴くことでいろいろ発見があったからです。

・各声部が各種楽器に分配されて演奏されることによって
楽譜のタテ(ハーモニー)とヨコ(メロディ)が明快に聴き取れて面白かった。

・CDとちがって聞こえたのが第19変奏。
ピチカートが印象的な編曲だと思っていたのですが、
フラジオレット気味の技法も加わった演奏だったことが分かりました。

・2007年秋に水戸室内管の定期で、
ヘルムート・ヴィンシャーマンの編曲と指揮で
室内管弦楽版のゴールドベルク変奏曲も聴いたことがあります。
それぞれの編曲のちがいを意識するのは自然なことです。
室内管弦楽版は、ヴィンシャーマンがオーボエ奏者だったこともあり、
オーボエが大活躍(宮本文昭氏)の編曲になっていました。
また第30変奏は合唱(盛岡バッハ・カンタータ・フェライン )も加わったコラール風。
全体的には世俗カンタータ風の編曲になっていた言えそうです。
一方で今回の紀尾井の弦楽合奏版は
非常に厳格でピュアな編曲に聴こえました。
どちらもバッハらしいとは言えそうですねw。


③について

前半の印象がよくなかったからか、
チャイコフスキーの弦楽セレは良く聴こえました。
これはシトコヴェツキーが指揮に専念したということもあると思います。
なにより前半よりも、断然、音がよく鳴っていました。
ロシアの冬景色を頭に思い浮かべなたら
弦の熱く豊穣な響きが立ち上がっていました。



演奏会が終わって、今回の紀尾井定期では
・指揮者がいるといない、
・その曲をよく分かっているか否か、
・パフォーマンスのエンジンがかからない前半とかかる後半など、
これらによって
ゴールドベルクと弦セレの出来の明暗が
分かれてしまったように考えました。

もしそうだとすると、前半と後半の演目を
入れ替えた方が良かったのではないでしょうか?

おそらく前日(2/13)も
同等の演奏だったはずだから…。
もし初日の反省を踏まえ
2日目にこのような変更をする英断していたら
演奏は変わっていたかも~と思いました。

■演奏会の評価(5点満点)
1|演奏内容の満足度:3.0
2|ホールのホスピタリティ:4.2
3|聴衆の態度・集中度:4.2
4|総合的な感銘度:3.8

(追記)
第19変奏のところの記述で、
フラジオレットっぽい弾き方がCDと異なる感じがしたと書きましたが、
紀尾井ホールの学芸員の方が、この件、
わざわざシトコヴェツキーに問い合わせをしてくれました。

スル・ポンティチェロという
楽器のコマの近くで弾く奏法に変えていたそうです。
そして、これまで何度もこの曲を演奏してきたけれど、
その度に奏法を変えながら試行錯誤してきたそうなので、
基本的には同じ演奏はないということです。



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