喜歌劇「こうもり」@新国立劇場(2/4)

2015.02.06.Fri.18:58





2月4日水曜日、
東京の新国立劇場で喜歌劇「こうもり」をみてきました。
2週間前に同劇場でみたワーグナーの「さまよえるオランダ人」のような
沈鬱で重厚な作品とは正反対の楽しく笑える作品です。
会場は、ほぼ満員でした。

「こうもり」の物語をひとことで言うなら
どっきりカメラ的なコメディ復讐劇でしょうか。
夜会で出会った仮面をつけた謎の貴婦人が実は妻だったとか、
小間使いが仮装して女優として振る舞うとか、
いろいろオチがあり、それらでどう笑わせてくれるかが最大のポイント。

個人的には、
演奏や演出に「アレッ?!」と思うところはありましたが、
全体的には、まあまあ楽しむことができたと思います。

「こうもり」のフィナーレは、劇中のさまざまなハプニングも
結局、すべてはシャンパンの泡のいたずら~
というかたちで大円団になります。
このうえない楽しさと笑いが終焉すると、
一抹の寂しさのような情感が残るのがなんとも言えません。
やはり喜歌劇は酸いも甘いも経験した「おとなの楽しみ」。
そういう点では、「こうもり」は欧州のように
その年の終わりの大晦日ごろに見るのがふさわしいと思いますw。

①演奏について

指揮したエシュヴェは、「こうもり」の指揮に手慣れた感じ。
あまりオーケストラは出しゃばらず、
主役はあくまで歌手という裏方に徹していた感じ。
唯一の聞かせどころの序曲では、
オーケストラがかたく鳴りがいまひとつ。
強弱を利かせながら、ちょっとやりすぎかなと思える
クレッシャンドの付け方はあまり好きじゃない。
無理に盛り上げようとしている意図がアリアリでした。
開演直後の序曲や前奏曲の演奏って、
準備運動をしないでいきなり走りだすようなものなので、
むずかしいのかも…。
カラヤンやクライバーのような演奏は
なかなかむずかしいみたいですねw。

歌のほうですが、
2週間前に聴いたばかりワーグナーのオペラの出演者は
からだ全身を響かせるように歌っていましたが、
「こうもり」の場合は軽く口先で歌うだろうことは想定内です。
歌だけじゃなく、アドリブ込みの演技の方も重要ですし…。
歌手の多くは、ウィーン・フォルクスオパーという
喜歌劇専門の劇場の方が多かったので、
芸術性をもとめるというよりも、笑いの方に軸足があるので当然でしょう。

アイゼンシュタイン役のアドリアン・エレートは、
知的な紳士という風貌なので、
あまり女たらしという感じがしませんでした。
ヘルマン・プライのような色気と毒がでてくるとよいのでは…。
しかし、彼が侮辱罪で収監されるシーンでは、
モーツァルトの「ドン・ジョバンニ」のアリアをチラッと歌うところはさすがw。
ドン・ジョバンニも無類の好色男だからです。

難役のオルロフスキー伯爵を演じたのはマヌエラ・レオンハルツベルガー。
いわゆるタカラヅカのような男役を演じました。
なかなか麗人風でで格好がよかったのですが、
大金持ちというよりも騎士のようだったかも。
歌い方もやや一本調子。
すこし声に艶が欲しかった。

おきゃんな小間使いのアデーレを演じたジェニファー・オローリンは
若い時のルチア・ポップを思い出させるようなチャーミングさと演技の上手さ、
堂々とした歌いっぷりでまずまずでした。

意外によかったのは、
日本人テノールとしてロザリンデに紹介されていた
アルフレード役の村上公太の艶のある美声でした。
アイゼンシュタインに間違われて収監されても牢屋の中で、
「魔笛」のタミーノのアリアや「トゥーランドット」のカラフのアリアを歌ってたw。

相対的にいうと、
独唱よりも重唱(アンサンブル)の方が楽しめました。
チームワークは良かったと思います。
これはトレーニングの結果でしょうね。

②演出について

喜歌劇に笑いはつきもの。
ドイツ語に加えて日本語も駆使された演出でした。
「ショウチュウ」「サケ」「スシ」と
日本語を連発するのはよいのですが、
それがあまりにも安易に使わすぎてしまって
後半では、ちょっと食傷気味でしたw。

第1幕で、アイゼンシュタインが小間使いアデーレに
夕食に日本食をつくるように命じるシーンがありました。
そして、お重に入ったお弁当風のものが出てきました。
それをアルフレートが蓋を開けて食べようとします。
その時、私は8倍の双眼鏡でしっかりと確認してしまった。
お重の中身が写真であることを…w。
日本にこだわった演出なのだから
小道具もツメが甘い!と言われないほうがよいですね。

③舞台装置について

第1幕は一般的にはアイゼンシュタイン家の居間となっていますが、
この演出では、アイゼンシュタイン家の庭という設定でした。
戸外であることは別に問題ではありません。
庭に置かれた樹木や花壇などが
アルフォンス・ミーシャ風に描かれた飛び出す絵本のようで
なんとも安っぽい感じがしました。

一方で、
第2幕のオルロフスキー邸の舞台装置はすばらしかった。
中央には、グフタス・クリムトの名画「接吻」が線画で描かれ、
壁装飾は建築家オットー・ワーグナーの
シュタインホーフ教会やマジョリカハウスにみられる
ウィーン分離派独特のキラキラした装飾的なデザインになっていました。
また舞踏会の会場の奥行き感も見事な豪華でした。

この2つのちがいって、
19世紀末のウィーン世紀末のモチーフによって
アイゼンシュタイン家とオルロフスキー家の差異を
わざと際立たせようとしていたのでしょうか?

④衣装について

第2幕の夜会に集う女性客の衣装はなかなか楽しめました。
クリムトの絵画のモデルと同じような衣装の人、
クレオパトラ風の衣装の人、
マイ・フェア・レディのヘップバーン風の人などさまざまでしたね。
主演の女性歌手のよりも鮮やかにみえましたよ。


2015年2月4日(水)14時 @新国立劇場オペラパレス
ヨハン・シュトラウス2世作曲 喜歌劇「こうもり」

指揮:アルフレート・エシュヴェ
演出:ハインツ・ツェドニク
美術・衣裳:オラフ・ツォンベック
振付:マリア・ルイーズ・ヤスカ
照明:立田雄士

キャスト
ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン|アドリアン・エレート
ロザリンデ│アレクサンドラ・ラインプレヒト   
フランク│ ホルスト・ラムネク
オルロフスキー公爵│マヌエラ・レオンハルツベルガー
アルフレード│村上公太
ファルケ博士│クレメンス・ザンダー
アデーレ│ジェニファー・オローリン
ブリント博士│大久保光哉
フロッシュ│ボリス・エダー
イーダ│鷲尾麻衣

合 唱│新国立劇場合唱団
管弦楽│東京交響楽団

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