歌劇「さまよえるオランダ人」@新国立劇場(1/21)

2015.01.24.Sat.01:35



最近、オペラを聴く機会を増やしました。
12月のN響定期で聴いた演奏会形式の「ペレアスとメリザンド」はとても良かったし、
今年の最初の音楽会は、地元の日立市でヴェルディを中心としたガラ・コンサートでした。
そして1月21日は新国で「さまよえるオランダ人」。
2月は「こうもり」と「メリーウィドウ」へ行きます。

水曜日の「さまよえるオランダ人」ですが、
結論から言うと、まあまあ満足できた公演でした。
会場は平日の昼でしたが、9割程度、埋まっていました。
新国の芸術監督に就任したばかりの
飯守泰次郎氏が指揮をするということでしたので
楽しみにしていました。

このオペラは、ワーグナーの初期の作品ですが、
彼の作品の普遍的テーマである「愛と自己犠牲による救済」が
色濃くでたものです。
物語を要約すると
永遠に海をさまよう呪われたオランダ人船長を、
乙女ゼンタの愛と死によって救われるという感じ。

奇しくも今年は未年。
羊は生贄の象徴のような干支なので、
年頭に自己犠牲のオペラを最初に見るというのは
なんともフィット感がありますw。

①演奏について

私見ですが、この作品の可否は、
オーケストラと合唱で決まると思っています。
なぜなら運命に翻弄される主人公らを支える役割であるし、
印象に残る美しいメロディを担うのは
独唱者よりも合唱やオーケストラだからです。

そういう点では、新国立劇場合唱団は佳演でした。
特の女声の内声がキレイでした。
「糸紡ぎの歌」は楽しめました。
シューベルトの歌曲「糸を紡ぐグレートヒェン」では
ピアノの音型がくるくる回る糸車を象徴していますが、
ワーグナーはメロディ・ラインの音型が糸車の円形を
想起させるものがありますねw.

東京交響楽団の演奏は、私的にはイマイチでした。
特に弦の音は厚みがなく、
海のうねりのような表現には物足りなさがありました。
金管の中でもホルンは重要パートなのに、よく音がハズレていました。

バイロイトで活躍しているオランダ人役のマイヤー、ゼンタ役のメルベートは
さすが!という感じでした。立体感がある力強いパフォーマンスでした。
特に第二幕最後のオランダ人とゼンタの永遠の愛を誓う二重唱がよかったです。

飯守氏の指揮は、ワーグナー指揮者としてはオーソドックスだったと思います。
安心して聴くことができた反面、際立った面白さも無かったです。
ソリストの見せ場では彼らの歌いたいようにすべてを委ねた後方支援の様相。
一方で合唱だけ、あるいは管弦楽だけの箇所は、
全般的にやや早めのテンポ設定だったでしょうか。
やや忙しない感じがして、音楽が軽く感じたところがありました。
もっとじっくりと音楽を作りこんでくれた方が私の好みでした。

②演出について

今回の演出は、マティアス・フォン・シュテークマンが担当。
2007年初演、2012年再演を経て今回公演が3度目の上演になるそうです。
ワーグナーはこの作品の全3幕を一気に通して演奏する構想したのですが、
今回は第1幕後に休憩、第2~3幕を通しで演奏というかたちでの上演でした。

序曲は原典版が用いられ、救済のモチーフがなし。
ただしラストシーンにおけるゼンタの「救済」の演出はあり。
ゼンタは幽霊船とともに沈み、と同時にオランダ人は呪いが解けて死ぬという演出。
このかたちは誰でも共感できるものでしょう。
「さまよえるオランダ人」をみた実感が増しますからね(苦笑)

舞台美術は絢爛豪華とうものではなく
極めてミニマルで必要最低限のもので構成されていたにも関わらず、
非常に有効にはたらいていて、様式感が感じられるものでした。
そして出演者をより際立たせるような考え方になっていました。

色彩も、海の色と血の色が効果的に使われていました。
これは、オランダ人の死ぬことが許されず海をさまよることと、
一方で死を希求することを示す記号としてのふたつの色。
舞台美術、照明、衣装などに色彩的な統一感をもたらしていました。
オペラの各場面を色彩によって補完する効果だったように思えます。
たぶんワーグナーがライトモチーフによって主人公を表現したように
現実と非現実をカラーモチーフで表現する試みをしたのでしょう。

また、人生を翻弄されているオランダ人の生き様を象徴するかのように
くるくる回る船の舵が印象に残る置かれ方にも着目しました。
第2幕の「糸つむぎの歌」では、
糸車が船の舵の似姿のように表現されていました。

今回の演出は、現実と非現実を記号化する試みによって
ワーグナーの夢想を具現化したかったのかなと私は想像してみましたが、
こういう演出、好きな方です。

ただ残念だったのは、合唱の一部をライブではなく
スピーカーを用いて増幅した音を使って音響効果を出していたことです。
生音で十分だったのではないかと思います。

③その他

本公演とは関係がない話ですが、
第1幕の後の休憩時間に1階のホワイエで寛いでいたら、
どこかで見たことがある男性が颯爽と歩いていました。
元首相の小泉純一郎さんでした。
オペラ観劇が趣味だときいていましたが、
まさか彼の姿をみるとは思ってもみませんでした。
初日ではなく、歌手陣の調子が上向きになる
二日目に来るというのもシブいw。
政治家には、芸術を理解する素養は必須だと思っていますので、
小泉さん以降のマンガ好きな元首相、右寄りの愛国系映画を愛する現首相には
やや残念な感じがするのは正直な気持ちです。

サッカー観戦用に買った8倍の双眼鏡は
オペラでも威力を発揮してくれたました。
持って行ってよかった(^_^)v

2015年1月21日(水)14時 @新国立劇場オペラパレス
ワーグナー作曲 歌劇「さまよえるオランダ人」

指揮: 飯守泰次郎
演出: マティアス・フォン・シュテークマン
美術: 堀尾幸男
衣裳: ひびのこづえ
照明: 磯野 睦

キャスト
ダーラント:ラファウ・シヴェク
ゼンタ:リカルダ・メルベート
エリック:ダニエル・キルヒ
マリー:竹本節子
舵手: 望月哲也
オランダ人:トーマス・ヨハネス・マイヤー

合 唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京交響楽団
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