残念だったバボラークのホルン独奏

2014.12.17.Wed.00:10
■ラデク・バボラーク&アレシュ・バールタ デュオ・リサイタル
■2014年12月8日(月)19時@水戸芸術館
■出 演
 ラデク・バボラーク(ホルン)
 アレシュ・バールタ(オルガン)

J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
J.S.バッハ:コラール〈目覚めよ、と呼ぶ声あり〉BWV645
リスト:バッハの名による前奏曲とフーガ S.620
ブルックナー(ボク編曲):交響曲 第7番 ホ長調より 第2楽章 アダージョ
 【休 憩】
ボク:ホルンとオルガンのためのマニフィカト
サン=サーンス:ホルンとオルガンのためのアンダンテ
ボク:夢見るクリスマス・キャロル
 【アンコール】
伝J.S.バッハ(GHシュテルツェル?):御身が共にあるならば BWV508

先週、ホルン奏者として高名なラデク・バボラークと
パイプ・オルガン奏者とのデュオ・リサイタルを聴いてきました。
全体的には予定されていたプログラムを
ソツなくこなしていたような感じでしたが、
私はあまりよい演奏とは思えませんでした。

非常に奇妙に思ったのは、
ブルックナー作曲の交響曲 第7番 ホ長調の 第2楽章 「アダージョ」を
ホルンとオルガン版で編曲された二重奏です。
私は事前に、
彼が2008年に録音した「ブルックナー・イン・カテドラル」というCDで
同じ曲を聴いていました。
ゆったりとしたテンポでなかなかイイ感じ。
冒頭のワーグナー・チューバの音色をホルンで出すのは大変そうでした。
演奏時間は24分30秒程度。
これは標準的な速度です。
実際、私が所有するブル7の管弦楽版のCDは
24~25分程度の演奏が多いです。
私はこのCDに準じた演奏が聴けると考えていました。

実際、バボラークがCD製作の時のインタビューで
「25分間も休憩もなしにコンサートで吹くのは大変なことかと思われますが、
この音楽に対して共感し、曲の精神的なものを理解し吹きこなすことが、
コンサートで演奏することの大事なポイントだと思います。」と語っていますし…。

しかし水戸芸術館での彼の演奏の冒頭を聴いた瞬間、
私は「はやい!変だ!」と思い、
腕時計で演奏時間を計測したら演奏時間は約20分程度でした。
これは異常なはやさです。
アダージョではなくモデラートの速度感。
はやいというだけでなく、全然、ブルックナーの音楽になってない。
ブルックナーの葬送音楽の雰囲気は微塵も感じられませんでした。

バボラークは、ブルックナーの楽譜に従った演奏をすることを放棄し、、
自身が吹きやすい速度で演奏を行っていたというのなら本末転倒です。
私はやっつけ仕事で、この曲を演奏したのではないかと思っています。
バボラークの演奏を聴いた多くの方が彼の演奏を賞賛していましたが、
ブル7のおかしなテンポ設定の件を誰も指摘していないことが
私にとって奇異でした。

ではなぜ、CD録音とリサイタルでのテンポが違っていたのか。

ブルックナー特有の長いフレーズをアダージョで吹くのは困難の極みです。
(プロ・アマ問わず金管・木管楽器を演奏したことがある人なら分かるはず。)
それが録り直しが聴くレコーディングではなく、ライブ演奏だったので、
なんとかそれを切り抜けるために
演奏しやすいテンポを選択したと想像しています。
もしそうなら、彼を音楽家として不誠実と思うことは妥当でしょう。

ちなみに
インテンポで演奏されたCDの録音場所は
チェコのモスト聖母被昇天教会です。
残響時間は不明ですが、
一般的な教会の残響時間は空席で3~4秒以上だと思います。
そして水戸芸術館のエントランスホールの残響時間は
空席で4.0秒。満席(300人)で2.6秒。天井高11m。
ほぼ満席で行われた今回のリサイタルは
CDよりも残響が短い場所で行われたと考えてよいと思います。
アダージョで演奏することで音が濁るとは考えにくい。
だから同じ演奏をしない理由は、演奏する空間のちがいとは思えません。

私がこれまで聴いてきたバボラークの演奏は、
小澤征爾氏とホルン協奏曲を独奏した水戸室内管弦楽団の定期では
鬼のような形相ですばらしい演奏をしてくれたのに、
自分が主宰する室内楽などでは、
あまり力が入っていない軽い演奏で
私は「?」と思ったことが多々ありました。
状況によって演奏の出来にムラがあるようです。

今回のリサイタルも、全般的に音の肌触りが粗めで
時折、ブクブクした音さえ聴こえてきました。
残念に思っていたのは私だけでしょうか?
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