聴き応えがあったN響定期「ペレアスとメリザンド」

2014.12.10.Wed.22:01
■NHK交響楽団第1796回定期演奏会
■2014年12月7日(日)15時~@NHKホール
■ドビュッシー作曲:歌劇「ペレアスとメリザンド」
 (全5幕・演奏会形式・字幕つき)

ステファーヌ・デグー(バリトン、ペレアス)
ヴァンサン・ル・テクシエ(バス・バリトン、ゴロー)
フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ(バス、アルケル)
カトゥーナ・ガゼリア(ソプラノ、イニョルド)
デーヴィッド・ウィルソン・ジョンソン(バリトン、医師)
カレン・ヴルチ(ソプラノ、メリザンド)
ナタリー・シュトゥッツマン(コントラルト、ジュヌヴィエーヴ)
浅井隆仁(バリトン、羊飼い)
東京音楽大学(合唱)
篠崎史紀(コンサートマスター)
シャルル・デュトワ指揮
NHK交響楽団

上演機会が少ないドビュッシーの歌劇「ペレアスとメリザンド」、
私は実演で聴きたいとずっと思っていましたが、
やっとその機会が今秋に訪れました。
それが日曜日に聴いてきたシャルル・デュトワ指揮のN響定期です。

「ペレアスとメリザンド」は
「青い鳥」で有名なメーテルリンクの戯曲をもとにしたオペラです。
中世の国アルモンド王国皇子ゴローが
森の中で泣いている美しい娘メリザンドを見つけ城に連れ帰って妻にする。
しかしメリザンドはゴローの異父弟ペレアスと惹かれ合い、
それに嫉妬した兄は弟を刺し殺してしまう。
傷を負ったメリザンドも子供を生み落して静かに死んでいく。
というなんともメルヘンなのか不倫物語なのかよく分からない物語。

演奏会形式で行われたこのオペラに私はたいへんに満足しました。
このオペラの美しさと哀しさと静けさがよく表現されていました。
この数年で聴いたN響定期でもっとも感銘を受けました。
これはシャルル・デュトワの手腕によるところが大きいでしょう。
歌手も素晴らしかったし、N響もドビュッシーの音を出してた。
N響、やればできるじゃんと思いました。

私が印象に残った点は以下の3つです。
①ドビュッシーの音楽はライブに限ると思った。
②「ペレアス」は声楽を伴った管弦楽作品に近いと思った。
③歌手陣のパフォーマンスが素晴らしかった。

①ドビュッシーの音楽はライブに限ると思ったこと

私はこの作品をブーレーズ盤(1970年)やカラヤン盤(1978年)のCDを愛聴。
ブーレーズは非常に重層的な響き、カラヤンは官能的な響きが特徴だと思います。
今回のデュトワはその両面を出していたと思います。
さらに言うと繊細さと透明感と静謐感がよく感じられました。
ドビュッシーの作品はどのような演奏形態でも、
生演奏では録音では伝わらない不思議な空気感を持っています。
私はステージ上に、靄や霧のような気象現象が
音によって生成されていたかのような気分で聴いていました。

②「ペレアス」は声楽を伴った管弦楽作品に近いと思った。 

今回、舞台形式ではなく演奏会形式だったことは、私にとっては理想的でした。
なぜなら私はこの作品を
オペラというより歌手を伴った管弦楽曲のように考えているからです。
歌手たちは美しいアリアを歌うことは少なく、重唱やアンサンブルもありません。
どちらというと、戯曲の台詞に音程という高低の重力が与えられた感じだから。
彼らは歌手というよりも、詩の朗読者のようでした。
同時に音楽の中に言葉が縫い込まれていると感じました。
フランス語以外での上演を拒否しているかのように、
言葉の響きがドビュッシーの意図通り音楽に組み込まれていました。
フランス語の肌さわりがとても心地よかった。
歌舞伎や能が日本語以外の上演が考えにくいのと同じように、
このオペラはフランス語以外での上演を
拒否しているような作品でしょう。

ちょっと脱線します。
10月4日に聴いた水戸室内管弦楽団(ハインツ・ホリガー指揮)の第91回定期演奏会で
ドビュッシー作曲のパレエ音楽「おもちゃ箱」が演奏されました。
この時、楽譜の記述されたバレエのためのト書きを
有名落語家が語るというかたちになっていました。
結果として、語りがオーケストラの音を邪魔してしまっていて私は失望。
音楽よりも、落語家の語りの方が主になっていましたね。
やはり作曲家がまったく意図していない演奏スタイルではダメだと思いました。
そういう点では、今回の「ペレアス」は作曲家の意図通りのものでした。
私は音楽と言葉が一体化した「ペレアス」を堪能できました。
私がこのオペラを聴きたいと思った理由のひとつは
このことを検証したかったこともあります。

③歌手陣のパフォーマンスが素晴らしかったこと。

今回の歌手陣でもっとも印象に残ったのは、
ゴロー役のバス・バリトン歌手ヴァンサン・ル・テクシエでした。
私、双眼鏡を覗きながら聴いていましたが、歌だけでなく
ゴローになりきっていて熱演していました。
芯があり朗々としたすばらしい声。
タイトルロールのペレアス役スウテファーヌ・デグーよりも存在感がでてた。
作品名を「ゴローとメリザンド」と言ってもよいぐらいでした。

次にメリザンド役のカレン・ヴルチも健闘していました。
少女性がある可憐でかつ官能的な歌唱だったと思います。
フランス女優に例えるとシャルロッテ・ゲーンズブールのようなコケテッシュな存在感。
ちなみにブーレーズ盤のエリーザベト・ゼーダーシュトレームはジュリエット・ビノッシュ
カラヤン盤のフレデリカ・フォン・シュターデはエマニュエル・ベアールでしょうかw。

またコントラルト歌手ナタリー・シュトゥッツマンのような
大歌手が脇役で出演とういのは意外でした。
デュトワのための友情出演でしょうか。

最後に、
やはりN響は指揮者次第で
演奏の差が著しいオーケストラだと思いました。
そう考えると、
来年2月のパーヴォ・ヤルヴィが指揮するN響定期も
ぜひ聴きたくなりましたよ。

■演奏会の評価(5点満点)
1|演奏内容の満足度:4.7
2|ホールのホスピタリティ:4.0
3|聴衆の態度・集中度:4.0
4|総合的な感銘度:4.6
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