チョ・ソンジン ピアノ・リサイタル

2014.10.29.Wed.11:51
■チョ・ソンジン ピアノ・リサイタル
■2014年10月27日(月)19時@浜離宮朝日ホール

♪モーツァルト:幻想曲ニ短調 K.397
♪モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第3番 変ロ長調 K.281
♪シューベルト:即興曲集D.935より第3番 変ロ長調 Op.142-3
♪バルトーク:「野外にて」Sz81
 【休 憩】
♪ショパン:即興曲 第1番 変イ長調 Op.29
♪ショパン:幻想曲 ヘ短調 Op.49
♪ショパン:4つのマズルカ Op.33
♪ショパン:バラード 第4番 ヘ短調 Op.52

 【アンコール】
♪リスト:『パガニーニによる大練習曲』第3番 嬰ト短調「ラ・カンパネッラ」
♪ショパン:夜想曲第13番ハ短調 op.48-1
♪シューベルト:「楽興の時」第3番ヘ短調D780-3
♪ショパン:「12の練習曲作品10」第1番ハ長調
♪ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番ハ短調作品13第2楽章

韓国出身の20歳のピアニスト、チョ・ソンジンのリサイタルを
5年ぶりに東京で聴いてきました。
彼の成長ぶりが著しく、とても感慨深い演奏会でした。

そして全体を聴いた印象として、
彼は来年のショパン・コンクールを狙っているのではないか~と直感的に思いました。
後半にショパンの選曲は言うまでもありませんが、
前半のモールァルトやシューベルト、バルトークの曲目から
ショパンを弾くためのエッセンスのようなものを意識しながら
コンクールへの準備をはじめているように思えたからです。

いちばん最初に弾かれたモーツァルトの幻想曲ニ短調、
私、最初のニ短調のアルペジオの波のような音型が
バッハの平均律第1巻ハ長調のプレリュードの変容であることを
彼の演奏をきいて気づかされた思いです。
ニ短調の部分ではバッハの姿が見え隠れしていました。
そして、アッと思ったのは楽譜に音がない休止の部分に
音の余韻や色がにじみ出た演奏になっていたことです。
セザンヌの水杉画の余白に手がスゥーと入っていきそうな感じ。
明らかに、彼の進化してますね。
音が玉のように美しいのは相変わらずです。
そしてニ短調からニ長調へ転調して陰と陽の世界観のちがいも明瞭で
たいへんに見通しがよい演奏でした。

モーツァルトのソナタ第3番も同様。
ここでも休符の部分に何度もハッとさせられました。
またハイドンを思い出させるちょっとした諧謔性とユーモアも…。
タッチや装飾音の感じから
ピアノでハープシコードを弾いているような演奏でもありました。

シューベルトの即興曲変ロ長調は、作品142の第3曲目もあたる部分です。
しかし単独で演奏しても「ロザムンデの主題による変奏曲」として完結できる~
と主張しているような演奏でした。これってベートーヴェン的?
このあたりから響きの表情が膨らんできた感じがしました。
第3変奏あたりのオクターブでメロディラインを歌うところあたりが顕著でした。

圧巻だったのは、バルトークの「野外にて」。
自然の中で採取し記譜された音が様々な音色で表現されていました。
太鼓、金属的な響き、虫や鳥の鳴き声、ぼんやりとした空気感、
バルトークの音楽の中から、
プロコフィエフ、ストラビンスキー、ドビュッシー、メシアンらの響きを
私は採取しながら聴いていましたw。

後半のショパンの4つの楽曲。
実は私、あまりショパンが好きではないのです。
だからあまり良い聴き手とは言えません。
しかし、ソンジンの演奏はそれなりに興味深く聴けました。
その理由は、一般的に早めに弾くところをたっぷりと、
またおそめに弾くところを早めに弾くなど
独自のショパンを追い求めている感じがしたところ。
加えて楽譜にないような響きが聴こえてきたこと。気のせいかなw。
弾いていない鍵盤の弦が共鳴しているような音響感でした。
弦楽器で感じるものと似ていましたね。
ミケランジェリが出していたという高次元倍音ってこんな感じなのでしょうか?
ちょっと驚きました。
本人が意識しているのかどうか、
調律になにか工夫があるのか分かりませんが…。

私がソンジンの演奏を聴くのは5年ぶりです。
2009年の浜松国際ピアノ・コンクールを15歳で優勝し、
中村紘子女史の推薦で水戸市の佐川文庫で行われた演奏会が
事実上の彼のデビュー・リサイタルとなりました。
その時のプログラムは以下の通り。

■2010年3月13日(土)18:00@佐川文庫
♪ベートーヴェン:ピアノソナタ第23番 ヘ短調 作品57「熱情」
♪シューマン:幻想小曲集 作品12
♪ショパン:スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31
【アンコール】
♪ドビュッシー:「ベルガマスク組曲」から月の光
♪ビゼー(ホロヴィッツ編曲):カルメン変奏曲
♪リスト:リゴレット・パラフレーズ S.434
♪ムソルグスキー作曲:組曲「展覧会の絵」から「殻をつけ雛どりの踊り」
♪リスト:パガニーニによる大練習曲S.141から第3番嬰ト短調「ラ・カンパネラ」
♪リスト:超絶技巧練習曲S.139~第1番ハ長調

15歳とは思えない貫禄のある演奏で私はたいへんに驚きました。
子供でもテクニックに秀でた「弾ける子」はたくさんいますが、
彼はすでに音楽家としての風格や音楽的体幹を持っているように感じました。
そして17歳で臨んだ2011年チャイコフスキーコンクールで3位。
今回の演奏で、着実に音楽家としてスケールアップしていました。
5年前はぽっちゃり系でしたが、
兵役に就いたこともあって精悍で研ぎ澄まされた雰囲気も…。

このまま成長を続けたら、
いっそう素晴らしいピアニストになるでしょうね。
今回のプログラムはモーツァルトやショパンが中心でしたが、
私は彼が生来のベートーヴェン弾きであると確信しています。

今回のリサイタルでは、
彼が来年のショパン・コンクールへの参加準備に着手している予感がありましたが、
ここまで弾けるのなら、自分の音楽づくりに専念したほうがよいと思いました。
また数年後、彼のリサイタルを楽しみにしています。

■演奏会の評価(5点満点)
1|演奏内容の満足度:4.5
2|ホールのホスピタリティ:4.0
3|聴衆の態度・集中度:4.5
4|総合的な感銘度:4.8
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