ミケランジェリが弾くラヴェル

2013.04.24.Wed.17:16


最近、私が好きなピアニスト、
アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリの
10枚組のBOX-CDセットを二種類買いました。

これはイタリアのAURAレーベルのアルバムを集めたものらしいです。
大手のDGやEMIに残された万全の音源とはちがうので
一部モノラルであったり、音質が悪いところがあったりします。
しかし私のようなファンにとっては感涙ものだと思います。

全20枚の中でもっとも印象に残ったのは
彼が弾くラヴェルの「夜のガスパール」です。
この演奏は、1987年6月13日のバチカン・ライブです。
この超難曲を難なく弾いてしまうのは言うまでもなく、
彼特有の硬質なキラキラした音が
非常にラヴェルの音楽に合っているように思えました。
それと凄まじい集中力で、
聴いている私の方まで緊張してしまいました。
音楽の元となったベルトランの怪奇趣味の詩の世界が
氷づけにされて、至高の美に塗り固められたイメージです。

これまで聴いた「夜のガスパール」では
アルゲリッチの1974年の録音がいちばんかな
と思っていましたが、
やや情念的な演奏であることが
個人的にはちょっと不満でした。
やっとそれを越える演奏にめぐり合えました。
それがあのミケランジェリだったとは…。

ミケランジェリがラヴェルを弾いた演奏では
ピアノ協奏曲ト長調を2種を持っています。

・大手のEMIが出しているグラシス指揮&フィルハーモニア管(1957年録音)
・怪しげなレーベルのチェリビダッケ指揮&ロンドン響(1980年ライブ盤)
録音嫌いのチェリビダッケとの共演したCDはかなりレアでしょうか。
だいぶ前に限定発売された11枚組のBOX-CDで、
音源は放送用らしいけど、音質は悪くないです。

演奏としては後者の方が断然好きです。
偉大な変人音楽家の二人が
意外によくフィットしています。
ディテールが鮮明で、
音楽の風景が高性能のレンズで切り取られているよう~。
ここでも彼の硬質な音が自在に発揮されています。

一般的にミケランジェリの場合、
近代フランス音楽の録音だったら
DGのドビュッシーの方が有名です。
しかしながら
ドビュッシーの曖昧でぼんやりした音楽よりも
ラヴェルのような明晰な音楽の方が
ミケランジェリに合うのではないかと思っていました。
しかしながら、ラヴェルの録音があまりに少なすぎる!

そんなことを考えていたら、
私と同意見の方が2名いました(笑)
スヴァトラフ・リヒテルと青柳いずみこ各氏。

青柳氏著の『ピアニストが見たピアニスト』(白水社)では
リヒテルはミケランジェリが弾くドビュッシーの「前奏曲第1集」を聴いて
「完璧な演奏、しかし雰囲気に欠けており、
この前奏曲集には不可欠な魅力というものも欠如している。」
一方で、
ラヴェルのピアノ協奏曲ト長調に対しては
「最高の演奏。今までこの協奏曲の演奏でこれを越えるものはない。
このピアニスト特有の冷たい音がここでは見事に合っていて
音楽と対立することがまったくない。」
とヒリテルは言っているそうです。

そして青柳氏は
ラヴェルとミケランジェリについて
とても興味深い指摘をしていました。



ラヴェルとミケランジェリは、
芸術家としての気質がとてもよく似ていた。
彼がラヴェルの作品をたった四曲しか弾いていないのは、
グルダがシューベルトをほとんど弾かなかったのと同じ理由かもしれない。
つまり、あまり自分と近すぎるので、
弾いていると魂を取り込まれそうになるのが怖かった-…。

青柳いずみこ著
『ピアニストが見たピアニスト』(白水社)



晩年にフリードリヒ・グルダが最後に録音したのは
シューベルトの「即興曲D899」や「楽興の時D780」だと思います。
このCDを持っていますが、すばらしいと思いました。
死ぬ前にグルダはシューベルトが弾きたかったのがシューベルトですか…。
グルダの遺言のようなCDだったのですネ。

スポンサーサイト
コメント

管理者にだけ表示を許可する