1ヶ月前にみてきた「池田学展 The Pen-凝縮の宇宙-」

2017.11.02.Thu.18:39
9月末に東京へ出張した時、日本橋のデパートで催されていた「池田学展 The Pen-凝縮の宇宙-」を見てきました。9月はバタバタしていて、展覧会を見てからもう1ヶ月も経ってしまいました。やっと感想を書けますw。以前、池田氏は美術番組で作品が紹介され、ずっと気になっていたアーティストでした。私の出張と個展のタイミングが合ったことが幸いしました。池田氏の画業20年を振り返る展覧会、私が会場に着いたのは比較的遅い時間でしたが、仕事帰りと思われる美術愛好者で大盛況でした。

私はどちらかというと、抽象画や現代美術が好きなので、この展覧会にあるような具象画を見たいと思うのは稀です。私の興味は池田氏の創作手法でした。1mmに満たないペンを使い、その細い線で描ける大きさは一日に10センチ四方。非常に緻密な描写です。半年前にみたブリューゲルの「バベルの塔展」を思い出しました。しかしながら、池田氏が描きだす作品はとても大きなスケール感と構成感がありました。映像展示をみると、池田氏は全体のイメージを決めず、漠然としたイメージで、まずディテールを描きはじめ、描きながら除々に全体像をつくっているという創作プロセスをとっているそうです。彼自身その描き方を「積み木を積むよう」と言っていました。作品そのものも大きく圧倒的。出来栄えもなかなかすばらしく、私は驚きました。私の仕事である建築をはじめ、多くの美術作品は全体像を構想してからディテールを決めていくことが多いからです。一般的な手法を演繹的というなら、池田氏の場合は帰納的と言えそうです。

芸大の卒業制作でもある『巖ノ王』(1998)は、前述したブリューベルの『バベルの塔』のような量感。精緻に描かれた岩の質感が見事。細部には動物が描かれていて、いろいろ発見があって楽しい作品。この作品が、池田氏の画風を決めたのだと思われます。
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『予兆』という作品は、大波で多くのものがのみ込まれる様子が描かれています。私は311東日本大震災のイメージを描いたのかな…と思ったのですが、実際に描かれていたのは2008年でした。芸術家の直感(予感?)がこの作品を描かせたのでしょうか?
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一方で最後の展示室にあった『誕生』という作品は震災後の2013~2016年に描かれたもの。大波が押し寄せる海面から大樹が現れ、花を咲かせています。復興の願いが込められた作品であることは明らかです。この展示室だけは撮影可でした。縦3m✕4 mもあります。実作をみると4年もかかることが実感できます。

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ドイツの建築家ミース・ファンデル・ローエは“神は細部に宿る(God is in the details)”という言葉をよく口にしました。彼の建築に見られる考え抜かれたディテールがすばらしく、細部まできちんと仕上げてあるのですが、池田氏の作品を見ていても同等のことを感じました。いかに細かいところまで描きこんでいるかは、実作をみないと到底、感じることができない作品でした。

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「おはよう、ディエゴ」 ジャコメッティ展は行かねば…

2017.07.09.Sun.17:45
今朝のEテレ『日曜美術館』の展覧会情報の中で、今、東京で行われている『ジャコメッティ展』が紹介されていました。私、彫刻家アルベルト・ジャコメッティの作品がかなり好きなので、上京した時には見に行かねば…と思っています。(テレビに出る前に行きたかったなw。なぜならテレビに出ると混むから)

ジャコメッティと私の出会いは、私が高校生のころです。現代国語の教科書に哲学者・矢内原伊作の随筆が載っていました。その内容に感銘を受け、彼の本を耽読しました。そして彼の著作『ジャコメッティとともに』に出会ったのです。当時は細長い棒のような彫刻というイメージでしたが、東京の美術館でジャコメッティの実作をみて、その「空間性」「哲学性」に感動しました。

その後、外遊先のスイスやフランスで彼の作品を見てきましたし、彼の展覧会なるものがあると、できるだけ行くようにしています。最後にみたのは、10年ほど前の川村美術館の回顧展かな?

二十数年前、仙台に勤務していました。ある画廊で、フランスのタンレ城というところで行われた展覧会のポスターを見かけ、気に入って買いました。シンプルなのに空間的で、彼の彫刻の特徴もよくでていたからです。せっかくなので額装してもらいました。いま、わが家の廊下に掛けられています。このポスターのタイトルは「男の肖像」ですが、ジャコメッティの弟ディエゴに似ているので、私が勝手にディエゴと名付けています。だから、毎朝、起きると「おはよう、ディエゴ」とつぶやきますw.


ジャコメッティは「見えるがままに」表現することにこだわった彫刻家です。「見えるがまま」というのは写真のようなものではなく、ジャコメッティが対象物と向き合うことでで思索したことによって顕れたかたちであると私は考えています。

わが家のジャコメッティ
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ブリューゲル画の「バベルの塔」の巨大模型

2017.05.08.Mon.19:29
先月4/21、都美でブリューゲル画の「バベルの塔」をみてきました。
これはその時に日記です。
http://ebinet.blog99.fc2.com/blog-date-20170423.html

実はこの展覧会の関連展示が東京芸大でも行われています。
ここではバベルの塔を立体化した巨大模型と、
バベルの塔が現実化したかのようなプロジェクション・マッピングをみることができます。
4/21に時間の都合で見れなかった芸大の展示を
5/4に埼玉スタジアムでのサッカー観戦前に見てきました。

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人の大きさを比較すれば、バベルの塔の大きさが分かると思います。
高さが約3メートルぐらいありそうです。
ブリューゲルの原画の人物の身長を170センチと仮定すると
バベルの塔そのものは510メートルの高さになるそうです。
この模型は1/150のスケールに相当します。
私も仕事がら、自分の設計を模型化することはありますが、
3メートルもの大きさのものは作ったことはないですね。

細かいところも、なかなか生真面目に作られていました。
かなりの労作です。

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この模型は、絵画に出てくる180度の再現でしたが、
絵画化されていない裏側も模型した360度の再現だったら
もっとおもしろかったと思います。

ブリューゲルの「バベルの塔」の縦断面

2017.04.23.Sun.18:09
4/21、所用で上京した時、時間を捻出して
都美術館で開催されているブリューゲル「バベルの塔」展をみてきました。
4/18にはじまったばかりだったので、比較的ゆっくり見られてよかったです。
大型連休中は大混雑になるでしょうね。
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内容的には大変に見応えがありました。
16世紀のネーデルランドの絵画・彫刻の歴史を辿りながら、
なぜブリューゲルが「バベルの塔」を描くに至ったのか想像することができました。

地下1階では宗教画から風俗画へ画題が移行していく過程の展示、
1階では、奇想の画家ヒロニムス・ボスとその影響を受けた作品の展示、
そして2階では、ブリューゲルの作品と、最終目標の「バベルの塔」にたどり着きます。
旧約聖書にある「バベルの塔」の具体的イメージをつかむまでの歴史もおもしろい!
なかなか人類は「天まで届く」イメージを持てなかったようですね。
「バベルの塔」に関しては実作だけでなく、
映像や3倍に拡大して模写された作品を通じて、
「バベルの塔」のディテールもよくみることができました。

「バベルの塔」はおよそ60センチ×75センチ。
この画面の中に、マクロとミクロの視点で
これほど大胆かつ精緻に描かれていて正直、ビックリしました。
およそ1400人ぐらいの人物が3ミリで描かれているそうです。
人を私の身長と同じ170センチで換算すると、バベルの塔は510m程度の高さ。
東京タワー333mより高いということになります。

私は建築関係者なので、
工事現場のようにレンガや漆喰を重機で上部に引き上げているところや、
最上部に足場をかけて塔をつくる職人の姿のディテールに引き込まれます。
塔内には、大聖堂の聖なる空間や、人々が集まる市場のようなものもあり
当時のオランダの人々の生活が垣間見れる風俗画的なところがありますね。
それと、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた肖像画の背景のように風景の描写も見事。

アーチの意匠に同じものがないことから、ローマのコロッセオ似かなと思っていたら
史料には、ブリューゲルはローマを訪れている旨の記述もありました。

それと、建物のスケール感のイメージですが、
私が世界でいちばん行きたいと思っているチベットの秘境にある
「カイラス山」のシルエットに似ているではないかと妄想しました。
塔というよりも、山に見るのは私だけかw。

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この展覧会を一望すると、ブリューゲルは
・バベルの塔のあり方を着想するための考え方を「奇想の画家」ボスに学んだこと。
・「農民画家」として、人々の生活を描くことに秀でていたこと。
・「風景画家」として、自然や街を描くことに秀でていたこと。
上記のようなことが、あぶりだしのように分かるようになっていて、
なかなかのGJな展覧会じゃないかと思いました。

それと、忘れていけないのは漫画家・大友克洋氏による
「バベルの塔」の縦断面のイメージ画が特別展示されていたことです。
(これは撮影可でした。)
大友氏の画からは、
①塔そのものが螺線形に積み上げられていること、
②内部には半屋内的な大きなのアトリウムがあること、
③②の屋根には開口部があり、ローマのパンテオンのような光が入ること、
④アーチ型に積み上げられた組積造の考え方、
などが分かりますね。

断面フェチの私にとって、
たいへんに興味深いものでした。

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バベルの塔

2017.03.14.Tue.09:39
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4月にブリューゲル画の「バベルの塔」が24年ぶりに来日します。
私、マレク・ヤノフスキが指揮するワーグナーの楽劇「神々のたそがれ」を聴くために
4月に上京する予定だったので、
それにあわせて「バベルの塔」も見て来ようと思います。